ソン・セビョクの新境地を示す鮮烈な悪役像にも注目
ヒロイン・ウナと子役・ソウォンとの微笑ましい関係性も見どころの一つだろう。特に「彼氏、いるの?」「好きなタイプは?」と聞かれた際のウナの返しは、知的かつ洒落が利いていている。
彼女の受け答えを聞いていると、男性であれば、「やられた~!」と思わずタジタジに、女性であれば「こんな、ちょっとワルいお姉さんになりたい!」と憧れを抱くことでだろう。
ソウォンはウナのことを「おねえちゃん」ではなく、「おばさん」と呼び、親子のような信頼関係を徐々に深めていく。両者の距離が縮まっていくプロセスも見どころだ。
ソウォン役のチョン・ヒョンジュンは、その容姿のかわいさも然ることながら、演技のクオリティーが異常に高い。それこそ世の女性たちは「こんな息子を助手席に乗せて車を運転したい」と、母性本能をくすぐられること、間違いないであろう。
そして、悪徳刑事であるチョ・ギョンピルのキャラクター像にも、注目したい。常に余裕満々な態度を見せつけ、残虐であり、冷酷。うすら笑いを浮べる彼の表情には、とにかく背筋が凍る。
演じたソン・セビョクは、『ベイビー・ブローカー』(2022/是枝裕和監督)にて日本での知名度も確固たるものにしたわけだが、今作の徹底的なヒール役は、彼の新たな魅力がセンセーショナルに爆発しているのだ。
主演のパク・ソダム同様、「彼を見ているだけでも、満足!」と思えるその存在感は、例えば『ブラック・レイン』における松田優作のそれに近いと言ったところだろうか。
そして、クライマックスにおけるウナとチョ・ギョンピルたちとのバトルシーンも、最高にスリリング。
よくある、「なぜ、この状況で格闘技のような殴り合いをする?」という描写ではなく、ちゃんとその場にある武器となるものを使用し、命がけの殺し合いをする。リアルなヒューマンドラマが、そのようなパートでも、しっかりと描写されているのだ。
そもそも、これまで演じてきた役柄のイメージから一変し、アクションをもこなせるパク・ソダムを確認できるのが、この作品であり、彼女のターニングポイントとなる映画であることは、疑いの余地もない。
日本のスタントパフォーマーの方々からも、賞賛の声が上がっているということも、頷ける。
最後の最後まで、ストーリーも映像描写もまったく飽きさせない、満足感。スリルだけではない複雑な人間模様。トータル的なエンターテインメントが味わえる、この映画を観ない手はない。
(文・ZAKKY)
『パーフェクト・ドライバー/成功確率100%の女』はTOHOシネマズ日比谷ほかにて全国公開中。
【作品概要】
監督・脚本:パク・デミン
提供:カルチュア・エンタテインメント、テレビ東京
配給:カルチュア・パブリッシャーズ
宣伝:ビターズ・エンド
2022年/韓国/109分/カラー/シネスコ/5.1ch/映倫区分:G/
原題:特送[특송]/英題:Special Delivery
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