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海に浮かぶ階級社会―脚本の魅力

ローズ役のケイト・ウィンスレット【Getty Images】
ローズ役のケイトウィンスレットGetty Images

1,514人。これは、実際のタイタニック号沈没事故で亡くなった人の数だ。この犠牲者数は、この事故が発生した1912年当時は歴代最多であり、全世界に大きな衝撃を与えた。しかし、この事故が世界史に残る大事故となった理由は、数の大きさだけではない。

映画『タイタニック』の前半では、ケイト・ウィンスレット演じるローズとレオナルド・ディカプリオ演じるジャックの「身分違いの恋」が描かれる。ローズのいる1等室は豪華絢爛で、ピカソやモネといった巨匠たちの絵が飾られている一方、ジャックの3等室は相部屋で、2段ベッドで寝起きしなければならない。

実際のタイタニック号も、客室は1等客室から3等客室まであり、3等客室は1泊2~4万円ほどとリーズナブルだったのに対し、1等客室は、1人1泊約500万円以上したという。つまりこの船は、文字通り「社会の縮図」だったのだ(なお、実際には、客室の下で火夫をはじめとする労働者たちが働いていた)。

本作では、こういった階級の違いが作品の原動力となっている。例えばローズは、母親から政略結婚を強要され、上流階級にいながらも自由に生きられないことを不満に思っており、絶望の果てに船尾から飛び降り自殺を図ろうとする。

一方ジャックは、懐は寒いが誰の束縛を受けることもなく世界を旅できるという自由を手にしている。つまり、船首で大空に向かって手を広げるというあの名シーンは、全てに絶望していたローズがジャックから自由を受け取り、大空に向かって羽ばたこうとしている姿を描いているのだ。

船が氷山に激突して以降は、それまでの恋愛ドラマとは打って変わってパニックムービーの様相を呈してくるが、ジャックとローズの愛の物語はまだ続いている。沈みゆく船の中で、ローズはジャックと添い遂げることを決める。しかし、自らの死期を悟ったジャックは、ローズに自分の人生を生きるよう伝えた後に、タイタニック号と共に海の底へ沈んでいく。

そして、生き残ったローズは、船員に名前を尋ねられた際、以下のように答える。

ーローズよ、ローズ・ドーソンよ。

この言葉は、彼女が自らの階級を捨て、自立した生き方を選んだことを示している。つまり、本作は、階級社会に囚われた女性が、自由な人生を見つける話なのだ。

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