ファオクの遺体をビニールハウスに隠す
気が動転しながらも、救急車を呼ぶべく携帯電話を手にするが、その瞬間、着信が来る。その相手は愛する息子からだった。ムンジョンはファオクの救命を諦め、事件を隠蔽することを決意する。
ムンジョンは悩んだ末に、同じく認知症で入院中の自身の母親・チュンファ(ウォン・ミウォン)を退院させ連れ出し、ファオクの身代わりとする。ファオクの遺体は毛布にくるんだ上で、テガンの車で運び、ビニールハウスに隠す。
不可抗力によって起きた事故とはいえ、人を殺めてしまったムンジョンだったが、その出来事を“なかったこと”とし、息子と一緒に暮らす未来を守ることを優先させる。このことが、ムンジョンを地獄へと導くことになる。
一方でムンジョンは、自らの顔や体を殴りつけてしまう自傷行為に悩まされていた。無料のグループセラピーに通っており、そこでDVに悩まされているスンナム(アン・ソヨ)という思春期の少女と出会う。
スンナムの置かれた状況に同情し、ビニールハウスで過ごすことを許すムンジョンだったが、ムンジョンが外出中にこっそりと入り、誕生日を祝おうとサプライズでケーキを用意していたスンナムに驚かせられ、思わず叱ってしまう。当然ながら「死体があるから」という理由を話せるはずはなく、叱られたスンナムは出て行ってしまう。
一方でテガンは、医師の旧友から、初期の認知症と告げられていた。テガンは記憶が消えないうちに思い出を作ろうと、旧交を温めたり、盲目になる前まで運転していた車を、大きな駐車場で、助手席に座ったムンジョンのナビゲーションによって運転する。
そのテガンも、すり替えられた妻について次第に違和感を抱く。チュンファの顔に触れたテガンは、その人物がファオクではないと確信するのだが、ムンジョンを問い詰めたりはしない。ムンジョンはすんでのところで、犯行が発覚することから逃れる。テガンは、本作で唯一といっていい常識人で、それ故にムンジョンから騙され続けることになる。