救いのないエンディングに呆然
場面は変わって、ムンジョンは息子と住むことになる新居の床を掃除していた。
同じ頃、ムンジョンの息子は、予定よりも早く少年院を出所し、同じく出所した仲間と、ムンジョンの住み家だったビニールハウスに侵入する。テーブルとソファーが残されていたため、酒盛りを始めようとするが、ある人物が入ってきたことで奥に隠れる。
その人物とはムンジョンだった。引っ越しの最後の後片付けかと思いきや、そうではなかった。彼女は信じられない行動に出て、過去に犯した過ちと同時に、未来をも失うことになるのだった。
あまりにも衝撃的で救いのないエンディングに、しばし、絶望感に襲われ呆然となる。
サスペンスというよりも、ここまで来たら“ホラー”にも感じられる本作。「半地下はまだマシ」というキャッチコピーに嘘はなかった。実際、韓国では、家を失った貧困層がビニールハウスに住まいを求める例が増加し、社会問題となっているという。それこそ、「半地下」にすら住めない層が生まれてきているのだ。
これを“海の向こうの話”として受け止めるがどうかは、鑑賞者の感じ方次第だろう。
しかし、OECD(経済協力開発機構)の調べによると、韓国の貧困率15.3%(2021)に対し、日本の貧困率は15.7%(2018)。格差社会の象徴のような米国ですら15.1%(2022)だ。しかも、韓国はその数字に改善傾向がみられるのに対し、日本では、統計すら取られていない。
その数字や取り扱い方から、我が国が先進国の中で“最貧国”であることを示しているとはいえないだろうか。日経平均株価が史上初の4万円超えを記録したところで、その不都合な真実に変わりはないのだ。