名作以上の傑作! 史上最高のリメイク日本映画(1)。戦争は地獄絵図…一切の美化なし、究極の反戦映画
今回はリメイクされ、成功を収めた日本映画をピックアップ。日本映画史に残る傑作映画に真っ向勝負を挑むべく制作された作品たち。随所に散りばめられた旧作へのリスペクトに胸がアツくなること必至。数多くあるリメイク作品の中から、決して観客に損をさせない珠玉の5本を紹介しよう。今回は第1回。(文・寺島武志)
●大岡昇平による戦争小説の金字塔を忠実に再現した“究極の反戦映画”
『野火』(2015)
製作国:日本
監督・脚本:塚本晋也
原作:大岡昇平
キャスト:塚本晋也、リリー・フランキー、中村達也、森優作
【作品内容】
時は太平洋戦争末期。日本勢力が弱まりつつある中のフィリピン戦線が舞台。肺病で部隊を追い出された、主人公・田村は食料不足のため、入院を拒否される。全てから排除された田村は逃亡した熱帯の山中で、神への信心を強めるのだが…。
【注目ポイント】
太平洋戦争において、日本軍の敗北が濃厚となった大戦末期のフィリピン戦線を舞台とした大岡昇平の自伝的小説『野火』。同作は市川崑監督のもと、1959年に映画化され、戦争映画の傑作として高い評価を得ている。本作はオリジナル作品から半世紀後に製作されたリメイク作品だ。
意外なことに、「市川監督作品よりも、自作の方が原作に近い」と、塚本監督は語っている。塚本監督による“リメイク版”は、戦後70年のタイミングで上映された。
カラーとなったことで、凄絶なシーンの描写が可能となり、レイテ島の戦いの悲惨さと、極限状態となった兵士たちが人間性を失っていく様を余すところなく表現することで、戦争というものを美化せず、地獄絵図として描ききった点で、モノクロームを活かした審美的な描写が散見できる前作を凌駕しているといえる。
死体がそこら中に転がるグロテスクなシーンと、フィリピンの海に沈む美しい太陽のコントラストも印象的である。市川作品の文学的描写と比較して、戦争の悲惨さをひたすらリアルに描き、かつ塚本監督自身もキャストの一員として主演を務めたことで、メッセージ性の強い、究極の反戦映画となっている。
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