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「もし夫の心が女性だったら…」映画で学ぶLGBTQ、おすすめ映画(3)。夫婦の愛情と苦悩…世界初の性別適合手術の行方

text by 寺島武志
リリーを演じたエディレッドメインGetty Images

「LGBTQ」とは同性愛者や、男性も女性も愛することができる両性愛者など、セクシュアルマイノリティの方々を表す言葉だ。近年は多様性を認め合える社会になりつつあるが、「LGBTQ」という言葉や概念が浸透する数年前まで、彼ら彼女らは苦しい思いをすることが多くあった。そこで今回は「LGBTQ」に焦点を当てた映画を5本紹介する。今回は第3回。(文・寺島武志)

●もしも夫に「女性として生きたい」と告白されたら…? 世界初の性別適合手術を題材にした実録ドラマ

『リリーのすべて』(2015)


出典:Amazon

原題:The Danish Girl
製作国:イギリス
監督:トム・フーパー
原作:デビッド・エバーショフ
脚本:ルシンダ・コクソン
キャスト:エディ・レッドメイン、アリシア・ビカンダー、リクベン・ウィショー

【作品内容】

世界初の性別適合手術を受けた人物であるリリー・エルベの半生を描いた伝記映画。舞台は1926年のデンマークの首都コペンハーゲン。肖像画家のゲルダ・ヴェイナー(アリシア・ビカンダー)は、風景画家の夫・アイナー(エディ・レッドメイン)と暮らしている。ある日、ゲルダが制作している絵の女性モデルが来られなくなり、アイナーに脚部のモデルを頼む。その後ゲルダは、遊び心でアイナーを女装させ、「リリー」という女性として知人のパーティーに連れて行ったが、リリーが男性と親しげにする姿に当惑する。

しかしその後もアイナーはリリーとして男性と密会を続けていた。ゲルダはリリーをモデルとした絵を描き、画商から評価を受ける。アイナーに対して、ゲルダは自分の前では男でいることを望むが、アイナーは「努力してみる」としか答えず、パーティーの出来事が女装のきっかけではないと打ち明ける。

やがて、アイナーはリリーとして過ごす時間が増え、絵を描くこともやめてしまう。ゲルダはアイナーを医者に診せるが、そこでは精神疾患という扱いしか受けなかった。

夫妻はパリに移る。パリにはアイナーの幼馴染みの画商・ハンスがおり、ゲルダはアイナーの真実を打ち明ける。話を聞いたハンスはゲルダの力になるべく、アイナーに数人の医師を紹介するが、やはり精神疾患という診断しか下されなかった。

しかし、「それは病気ではない。アイナーの言うことは正しい」という医師が現れる。この医師はアイナーに先例のない性別適合手術の存在を告げ、アイナーは手術を受けることを決断する。

【注目ポイント】

一生の愛を誓った人から「女性として生きていきたい」とカミングアウトされたら…。しかも目覚めのきっかけを作ったのが自分だったとしたら…。そんな究極の問いを本作は観る者に投げかける。

危険な手術を経てでも女性としての生き方を得ようとする夫を応援するゲルダ。観る者はゲルダを不憫に感じると同時に、物語が進展するにつれて、徐々に2人を応援したいという感情が芽生えてくる。

「アイナー」としての自分を捨て、世界初の性別適合手術に踏み切ったリリーの勇気や覚悟も尊重されるべきだが、そんなリリーを理解し、受け入れたゲルダの深い愛情や葛藤が軸となっている作品といえる。

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