「ブチ切れた愛情表現だけど…」漫画家・丘上あいが選ぶ”心の映画”(2)。「こういう物語をいつか書きたい!」
各界で活躍する著名人に「人生に影響を与えた映画」をセレクトしてもらい、その魅力を語ってもらうインタビュー企画。今回登場するのは、漫画家の丘上あいさん。2017年より講談社と『まんが王国』との共同プロジェクトとして連載された『ギルティ ~鳴かぬ蛍が身を焦がす~』はテレビドラマ化を果たすなど話題に。そんな数々のヒット作を生み出してきた一児の母でもある彼女に、その半生における様々なポイントで心を焦がされた映画を5本紹介してもらった。今回は第2回。(文・ZAKKY)
●「こういう物語をいつか書きたい」1980年代を代表する鮮烈な青春映画
『ベティ・ブルー 愛と激情の日々』(1986)
上映時間:121分
製作国:フランス
監督:ジャン=ジャック・ベネックス
脚本:フィリップ・ディジャン
キャスト:ベアトリス・ダル、ジャン=ユーグ・アングラード、コンスエロ・デ・ハヴィランド、ジェラール・ダルモン
―――続いては、ジャン=ジャック・ベネックス監督による、80年代を代表するフランス映画の一本です。
「高校生のころに後追いで観たのが、出会いです。衝動的なヒロイン・ベティの話なんですが、この子のことがキャラクター的にすごく好きなんです。知り合ったばかりの男とすぐにSEXしてしまうような危なっかしい子なのですが、その場かぎりと思いきや、その相手であるゾルグが夢見ている小説家としての才能を見抜いて、『あなたは天才!』と喜ぶんですよ。その後、彼の小説を出版社に売り込んだりと、とにかくゾルグに尽くすんですね。そして、売り込んだ先で門前払いをしてきた編集者に対してブチ切れる…。そんな彼女がとても魅力的なんです!」
―――丘上さんは漫画家になってから、作家目線でベティの恋人ゾルグに共感したりもするのでしょうか?
「なくはないですけど…。やっぱり女として、ベティへの共感と、彼女を応援したいという気持ちの方がはるかに大きいですね。彼女はどんどんおかしくなって、愛情表現も過剰になっていくのですが、その様が本当に愛おしくて。端から見るとちょっと異常かもしれませんが、2人はちゃんと愛し合っているので、ひとつの愛の形としてありだと思うんです。どっちかというと、自分もベティ気質ですし。若い頃に失恋したり、気持ちが乱れた時に、家中の物をひっくり返していたことを思い出します(笑)。でも、そうやって暴れる様子を描くことで伝えられることもあると思うんですよ。そういう物語をいつか描きたいという願望もあります」
―――『ギルティ~鳴かぬ蛍が身を焦がす~』は、数ある丘上作品の中でも、この映画に近い部分があるのではないでしょうか?
「ああ、そうかもしれません。『ギルティ』には瑠衣というキャラクターがいて、彼女はベティのような激情型ではないのですが、歪んだ愛情表現をする部分で似通っているかもしれませんね。いろんな愛の形があるということを体現しているという点で、今までで一番楽しく描けたキャラクターです。そういった部分では、ずっと好きだった『ベティ・ブルー』からインスパイアを、無意識のうちに受けていたのかもしれません」
【関連記事】
漫画家・丘上あいが選ぶ”心の映画”5選(1)
漫画家・丘上あいが選ぶ”心の映画”5選(3)
漫画家・丘上あいが選ぶ”心の映画”5選(全作品紹介)