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漫画『善悪の屑』&『外道の歌』作者・渡邊ダイスケが愛する映画(5)。ドラえもん史上最高! 小泉今日子が武田鉄矢に!?

text by ZAKKY
写真Wakaco

各界で活躍する著名人に「人生に影響を与えた映画」をセレクトしてもらい、その魅力を語ってもらうインタビュー企画。今回登場するのは、漫画家の渡邊ダイスケさん。シリーズ累計発行部数580万部以上突破中の『善悪の屑』~『外道の歌』が各界で話題沸騰中。このヴァイオレンス・ヒューマンドラマを読んだことがある人であれば、どんな人が描いているのか?と気になっているはず。そんな渡邊氏に好きな映画について存分に語っていただいた。今回は第5回。(取材、文・ZAKKY)

●小泉今日子のはずが武田鉄矢に…。渡邊ダイスケが人生で最も多く観た映画

『ドラえもん のび太の魔界大冒険』(1984)


出典:Amazon

―――最後に挙げられたのが、映画『ドラえもん』シリーズでも屈指の人気を誇る作品です。個人的に意外なチョイスだと思いました。

「小学生の頃に、初めて親とではなく、友人と観に行った映画ですね。リメイク版(※『映画ドラえもん のび太の新魔界大冒険 〜7人の魔法使い〜』【2007】)も含めて、人生で一番観ている映画です。DVDも、もちろん持っています」

―――相当な思い入れですね。

「大人になった今でも、例えば飲んで帰ってきた後に、ハイボールを飲みながら、ラストシーンだけ観るのが、定番となっています。ゲストキャラである満月美夜子とのび太が別れる場面がとにかく切なくて、観るたびに泣いてしまうのですが…、劇場公開版とDVD版には重大な違いがあるんです。劇場版のエンドロールには、主題歌『風のマジカル』(小泉今日子)という超名曲が流れるのですが、ビデオ・DVD版では、武田鉄矢の曲に差し替えられているんですよ!!」

―――曲の使用契約期限の問題で差し替えになったようですね。

「武田鉄矢さんの曲も素晴らしいのですが…。高校生の頃に地元の友達と集まって、本作のビデオを鑑賞したことがあるのですが、エンドロールで思わず『何それ~!!』って。ビデオの不具合か海賊版でも借りたのか!? と思わず疑いましたもの(笑)」

―――アハハ!

「で、時を経て、都内の映画館で当時のフィルムで上映されるというイベントがあったので、またまた友人と劇場に足を運んだんです。でも、行ってみたら、キャンセル待ちの長蛇の列で、愕然としましたね。でも、多分、みんな僕らと同じ気持ちで来ているんだなとも思いました。『風のマジカル』ヴァージョンのエンドロールが観たいんだろうなって」

―――素敵な映画って、オープニング曲からエンディング曲まで含めて、ひとつの物語ですからね。

「そうなんです!でも、Netflixでついに元のヴァージョンが配信されたんですよ!」

―――おお!

「でも、残念なことに期間限定でして、気が付いたと思ったら配信終了していたんです…。これで、永遠に観られるぞ~!と思っていたのに」

―――悔やまれますね…。

「あ、すみません。肝心の映画の中身の話をしていなかったですね(笑)。この映画の一番の魅力は、伏線回収やタイムパラドックスが、無理なく、わかりやすく表現されているところですね。『ドラえもん』シリーズの中だけでなく、他のSF映画と比べても、完璧に練られた上質な作品だと思います」

―――初めて観たのは小学生の頃と仰っていましたね。もしかしたら、本作を通じて“伏線回収”という概念を初めて知ったのではないでしょうか?

「ああ、そうですね。その点も衝撃的だったのかもしれません。この作品では、“あべこべクリーム”をはじめ、原作に登場するアイテムが、それこそ無理なく、劇場版ならではの使い方をされているんですよ。そういった演出もファン心を掴んでいますね」

―――なるほど。

「おそらくのび太は、ちょっとだけ年上の美夜子に、憧れが入り混じった恋心を抱いているんです。多分、長い歴史を誇るドラえもん映画において、そのような関係性は他にないのではないか。だから、最後の別れのシーンがもたらす感動も一塩なんです」

―――お話を聞いているだけで、泣きそうになってきました…。

「僕もいつか本作のようなSF作品に挑戦したいと思っていますし、何にしろ、観てほしい1作ですね!」

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―――では、最後に『映画チャンネル』読者に一言お願いします!

「漫画と映画は、仮に今すぐ世の中からなくなったとしても、生きる上では困らないという点で共通しています。僕は漫画の作り手として、常にそういった葛藤を抱きながら作品作りに励んでいます。とはいえ、僕は映画作品から、漫画家としてはもちろん、人間として大切なことを沢山学んできました。映画や漫画は生きる上で不要不急であると同時に、優れた作品は、自分の心を守ってくれる大切な存在になるのです。なので、気になった作品は躊躇せずにどんどん触れてみてほしいですね」

あの漫画を描いている作者がこの映画、好きだったんだ!?…と、いい意味で思えるギャップ萌えなインタビューであった。渡邊ダイスケ作品でカタルシスを味わった後に、氏が挙げた『ドラえもん』などを観てみるのも、新しい発見があるのではないだろうか。

(取材、文・ZAKKY)

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