「そんなわけあるか!」ツッコミどころ満載のSF日本映画(4)。陳腐な脚本…残念で酷評な”アイドル映画”
洋画に比べるとまだまだ充実度が低い印象のある日本のSF映画だが、努力のあとが見られる作品はある。しかし、あまりにもスケールが大きすぎたり設定が甘いと、観る側を困惑させてしまうのがSFの難しい点だ。今回は、そんな国内のSF映画のなかから、特にツッコミどころの多い作品を5本セレクトした。(文・寺島武志)
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『篤姫』ブームに乗っかろうとするも失敗…。
元モー娘。勢ぞろいのタイムスリップコメディー
『篤姫ナンバー1』(2012)
上映時間:86分
監督:小中和哉
脚本:加藤淳也
キャスト:石川梨華、菊田大輔、中澤裕子、佐藤寛子、山崎裕太、吉澤ひとみ、草刈正雄、秋本奈緒美、つんく
【作品内容】
嘉永6年(1853年)。薩摩藩主・島津斉彬の養女・篤姫は、徳川家への輿入れのため薩摩から江戸へと向かっていた。しかしその道中の箱根で空に現れた彗星の光に包まれ、160年後の現代にタイムスリップする。
現代に降り立った篤姫は、彗星の観測に来ていたカップル、有山里美(佐藤寛子)と野田雄介(山崎裕太)に出会い、マンションに招かれる。
見るもの全てに驚く篤姫は翌日、里美の仕事場である銀座の高級クラブ「派那子」に連れていかれる。葵ママ(秋本奈緒美)に気に入られた篤姫は、ホステス「篤子」として働くことになるのだが…。
【注目ポイント】
つんくがエグゼクティブプロデューサーを務め、「ドリームモーニング娘。」の石川梨華を主演に迎えて贈る痛快コメディー作品。
幕末に活躍した篤姫(石川梨華)が現代にタイムスリップし、銀座の高級クラブでホステスのナンバー1を目指して奮闘しながら恋と友情を育み成長していく姿を描いている。「ウルトラマン」シリーズなどを手掛けた小中和哉が監督を務めている。
周囲の助けを得て、現代女性のスタイルを学んでいく篤姫だが、し烈なホステス同士の争いや友情、ほのかな恋、さまざまな客たちとの触れ合いなどを通し、女性の強さと優しさ、真の美しさを知っていく…というストーリーだ。
映画にかぎらず、あらゆる分野におけるヒット商品において、「意外な要素の組み合わせ」は重要である。本作が製作された2012年当時、「モーニング娘。」は一時期の勢いをすっかり失い、アイドル界は秋元康がプロデュースを手掛ける「AKB48グループ」の天下であった。
そんな中、つんくが思いついた、値千金のアイデアが「篤姫×キャバ嬢」という組み合わせであった。しかし、組み合わせがあまりにも突飛すぎたためか、世間からの評価はイマイチ。
モーニング娘。のメンバーがキャストとして揃い、つんくが製作総指揮を務めていることから、ファン向けのいわれる“アイドル映画”であることは明白だが、予定調和のシナリオは陳腐なもので、ファン以外からは関心を持たれなかった。
タイムスリップした理由も明らかにされず、消化不良な印象を残す。さらに、本作が公開される3年前に放送され、大ヒットしたNHK大河ドラマ『篤姫』のブームにあやかろうとする思惑も見え隠れする。二番煎じにもなり損ねた残念な作品だ。
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