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大爆死の邦画は? 2023年上半期の大コケ日本映画(3)。番宣連発も虚しく…わずか5億円の期待外れ豪華作

text by 寺島武志

2023年も残すところあと半年を切った。今年に入って何本の映画を観ただろうか? 日本映画は是枝裕和監督の『怪物』や北野武監督『首』などがカンヌ国際映画祭で招待されたりと話題作が目白押しであった一方、期待に反して目覚ましい興行成績を残せなかった作品も。今回は、2023年上半期でイマイチな数字に終わった映画を5本セレクトした。(文・寺島武志)

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超豪華なキャスティングに注目。
曖昧なエンディングに賛否両論

『最後まで行く』(5月19日公開)

上映時間:118 分
監督:藤井道人
脚本:平田研也、藤井道人
オリジナル版脚本:キム・ソンフン
キャスト:岡田准一、綾野剛、広末涼子、磯村勇斗、駿河太郎、杉本哲太、柄本明、山中崇、黒羽麻璃央、駒木根隆介、山田真歩、清水くるみ

【作品内容】

刑事の工藤祐司(岡田准一)は、危篤の母の元に向かうために車を飛ばすが、その道中、妻である美沙子(広末涼子)からの連絡で、母の死を知ることになる。その瞬間、車の前に突然現れた男をはねて、死に至らしめてしまう。

工藤は男の遺体を車のトランクに入れ、その遺体を母の棺桶に入れ、母とともに斎場で焼こうと考える。しかし、工藤のスマホに「お前は人を殺した。知っているぞ」というメッセージが入る。

そのメッセージを送ったのは県警本部のエリート監察官・矢崎貴之(綾野剛)で、工藤は矢崎から追われる身となる。

【注目ポイント】

俳優の綾野剛(2016年)
俳優の綾野剛Getty Images

オリジナルは、2014年に、キム・ソンフンが監督・脚本を務め、韓国で製作・公開された作品。その後、立て続けに各国でリメイクされた。

2017年に『ピースブレイカー』として中国でリメイク。2022年には『レストレス』という題名のフランス版リメイクが制作されている。日本版は、『新聞記者』(2019)、『余命10年』(2022年)などで大ヒットを飛ばした藤井道人を監督・脚本と務め、主演に岡田准一を迎えて製作された。

岡田扮する主人公・工藤は、不幸・不運が続いた人物ではなく、ヤクザから賄賂を受け取っているような不良刑事だ。母の死の直前には、週刊誌によって裏金問題が報じられ、上司である淡島幹雄(杉本哲太)から、疑いの目を向けられる。

さらに、裏金を渡していたヤクザの組長・仙葉泰(柄本明)からは、殺人依頼されるハメに…。登場人物による様々な思惑が複雑に入り組み、かつ、スピード感あふれる展開、狂気的なラストシーンと、韓国映画らしさを濃厚に感じさせるタッチで全編が描かれている。

工藤を演じる岡田准一、彼を追う矢崎を演じる綾野剛の凄みある演技も見どころだが、ゴールデンウイーク直後という公開時期の悪さも影響してか、興行収入はおよそ5億円と伸び悩んだ。公開前には主演俳優2人が頻繁にテレビ番組に出演し、精力的に宣伝活動に励んでいたことを鑑みても、決して褒められた数字ではないだろう。

興行成績が伸び悩んだ要因の一つと考えられるのが、韓国のオリジナル版と全く異なる結末。

『最後まで行く』というタイトルに似つかわしくない、鑑賞者によって様々な想像が可能な、ハッピーエンドにもバッドエンドにも取れる曖昧な締め方は、観る者に消化不良を引き起こし、口コミによって鑑賞者の輪が広がることを阻害したのではないだろうか。

一方で、岡田准一はじめ、キャストは素晴らしく、綾野剛のサイコパスぶりもいかんなく発揮されている。

製作陣の狙いとしては、韓国映画『殺人の告白』(2012)を原案に、興行収入約24億円とスマッシュヒットを記録した、藤原竜也主演『22年目の告白 私が殺人犯です』の二匹目のドジョウを狙ったのかもしれない。しかし、目論見は大きく外れることになった。

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