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日本映画史に残る俳優降板トラブル…悪夢を見たワケあり邦画(5)日本を襲った悲しみの衝撃…危機を救った親友

text by 寺島武志

病気や怪我、はたまた役者の突然の芸能界引退…。スケジュールの厳しい撮影期間中、役者の急な降板トラブルは意外と多い。しかしそのピンチを、代役の俳優が思わぬファインプレーで作品を成功に導くことも。今回は邦画から代役を見事にこなした作品を5本セレクト。降板理由を交えて紹介する。(文・寺島武志)

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志村けん、突然の死去
バトンを引き継いだのは50年来の友人

降板→志村けん 代役→沢田研二
『キネマの神様』(2021)


出典:Amazon

上映時間:125分
監督:山田洋次
原作:原田マハ
脚本:山田洋次、朝原雄三
キャスト:沢田研二、菅田将暉、永野芽郁、野田洋次郎、リリー・フランキー、北川景子、寺島しのぶ、小林稔侍、宮本信子、志尊淳、松尾貴史、原田泰造、片桐はいり、迫田孝也、前田旺志郎、前田航基、今井翼、曽我廼家寛太郎

【作品内容】

ギャンブルと酒浸りで借金を背負い、家族にも見放されたダメ親父のゴウ(沢田研二)。しかし若き日のゴウ(菅田将暉)は映画の撮影所で助監督として働いており、映画を何よりも愛し、夢を追いかけていた。

かつてお蔵入りとなってしまった初監督作品『キネマの神様』の脚本が出てきたことで、ゴウの中の止まっていた時間が再び動き出す。

【注目ポイント】

(左から)志村けん、沢田研二
左から志村けん沢田研二Getty Images

小説家・原田マハが2008年に発表し、2018年に舞台化された同名小説を本作が監督作品89作目となる山田洋次のメガホンにより映画化された作品。

松竹映画100周年記念作品であり、ダブル主演となる沢田研二と菅田将暉が主人公「ゴウ」を2人1役で演じ、映画作りに人生を捧げた男の一代記が周囲の人間模様と共に描かれている。

当初、「ゴウ」には志村けんがキャスティングされていた。実現していれば、これが志村にとって、映画初主演作となるはずだった。

しかし、ゴウのなじみの映画館が新型コロナのあおりを受け閉館するという本作のシナリオとリンクするかのように、志村をウイルスが襲う。

感染が明らかとなった3日後に出演辞退が発表され、さらにその3日後に、志村は急死。日本全国に衝撃が走った。

緊急事態宣言が発令されたことにより、撮影も中断する中、代役探しが行われ、指名されたのは志村と50年にもわたる交流がある沢田研二だった。二人はお互いにリスペストしあう仲で、テレビでは志村とのコントも演じていた。

沢田は、かつて映画監督を志すも挫折し、ギャンブルにのめり込み、家族からも見放されながらも映画を愛し続けるダメ男を、“代役感”を微塵も感じさせない好演を見せた。本当は志村が演じるはずだったことも忘れさせるほどだ。

“日本で最もコロナの影響を受けた映画”ともいわれた本作だが、山田洋次をはじめとする製作スタッフ、そして、菅田将暉、北川景子などの豪華出演陣の熱意と執念によって日の目を見ることとなる。

この事実は、興行収入などでは測れない、価値のあるものだ。

沢田演じるゴウが歌う場面や、エンドロールにも、本来の主役だった志村へのレクイエムが散りばめられており、本作の見どころの一つとなっている。

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