名作以上の傑作! 史上最高のリメイク日本映画(3)台湾版以上の面白さ! 完璧な脚本で大成功のラブコメ
世界中から評価される名作映画たち。日本でもリメイク映画は数多く制作されているが、今回はその中でも特に評価の高い作品を選出。脚本と演出を変えることで、日本人に馴染みやすくした監督と脚本家の手腕、また俳優たちの演技が光りまくる。オリジナルを超えた珠玉の日本版リメイク作品をセレクトした。
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何をしても早くなる男×何をしても遅くなる女のラブコメ
『1秒先の彼』(2023)
上映時間:119分
監督:山下敦弘
脚本:宮藤官九郎
原作:『1秒先の彼女』(2020・台湾)
キャスト:岡田将生、清原果耶、福室莉音、片山友希、しみけん、笑福亭笑瓶、松本妃代、羽野晶紀、加藤雅也、荒川良々
【作品内容】
郵便局員のハジメ(岡田将生)は、周りよりワンテンポ早く行動してしまい、疎まれていた。同僚のエミリ(松本妃代)に告白されて付き合うが、ひと月も経たずにフラれてしまう。妹の舞(片山友希)やその彼氏ミツル(しみけん)にもからかわれてしまうような冴えない男だ。
ハジメが勤務する郵便局に、窓口で切手を買って手紙を出しに来る、根暗そうな大学生レイカ(清原果耶)が来るようになるが、ハジメは気に留める素振りもない。
しかし、レイカはハジメとは逆で何をするにもワンテンポ遅く行動してしまう。そんなレイカのハジメとの出会いは両親が起こした交通事故で、レイカが重傷を負い入院した病院。隣の病室にいたハジメはレイカを励ましてくれる。
【注目ポイント】
何をしても早くなる男と、何をしても遅くなる女の恋愛劇を描いたラブコメディー。
本作は、2020年製作の台湾映画『1秒先の彼女』を、山下敦弘監督と宮藤官九郎の脚本によりリメイクされた作品。オリジナル版とは男女の立場を入れ替えている。京都の美しい風景を背景に作品に“消えた1日”をめぐる物語を描いている。
“台湾ニューシネマの異端児”ことチェン・ユーシュンが監督・脚本を務めたオリジナル版の幹の部分は崩さずに、クドカン独特のテンポの良いコメディーパートを加え、メインキャストには岡田将生と清原果耶が務めることでポップな作品に仕上がったリメイク版。
SF的要素、ファンタジー的要素も加わり、原作に負けるとも劣らない評価を得ている。
タイトルからわかるとおり、オリジナル版は、男性による女性への片思いを描いているのに対し、リメイク版では、女性による男性への片思いを描いている。
台湾では、オリジナル版が公開された際、主人公が女性に思いを寄せ続け、とあるきっかけで人形のように動かなくなった彼女を思い通りに動かす描写に対し、「セクハラ行為」を美化しているという批判が上がった。
一方、宮藤官九郎が手がけたリメイク版のシナリオは、性別を逆転させることで、上記のような批判を避けつつ、オリジナル版から美点だけを抽出して、見事、リメイクすることに成功している。
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