まるで毒…最悪の犯罪の引き金に? 史上最も危険な名作映画(5)完成度が高過ぎて詐欺教科書に…衝撃すぎる被害額は?
映画は心の薬だ。スリリングなサスペンスやミステリー、人生を描くヒューマンドラマは、人々にとって娯楽であり刺激であり、日々を彩るのに役立つ。しかし同時に、毒になる危険性もはらんでいる…。中には映画を悪用し、事件を起こしてしまう者がいるのが現実だ。そこで今回は、皮肉にも犯罪者を生み出した映画を5本紹介する。(文・寺島武志)
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完成度の高い娯楽作だが…詐欺事件の元凶となった
『オーシャンズ11』(2001)
上映時間:117分
原題:Ocean’s Eleven
製作国:アメリカ
監督:スティーブン・ソダーバーグ
脚本:テッド・グリフィン
キャスト:ジョージ・クルーニー、ブラッド・ピット、マット・デイモン、アンディ・ガルシア、ジュリア・ロバーツ、ドン・チードル、エリオット・グールド、カール・ライナー、ケイシー・アフレック、スコット・カーン、エディ・ジェイミソン、バーニー・マック、シャオボー・クィン
【作品内容】
ジョージ・クルーニー、ブラッド・ピット、ジュリア・ロバーツといった超豪華キャストで描いた痛快な現金強奪ストーリーである本作。実は監督ルイス・マイルストン、主演フランク・シナトラによって、1960年に製作された『オーシャンと十一人の仲間』のリメイク作だ。
【注目ポイント】
“犯罪映画”の宿命というべきか…。
本作を模倣した犯罪者が現れ、オーストラリア最大のカジノが詐欺の被害に遭い、3,200万豪ドル(約30億円)を騙し取られ事件が起こる。その手口は、本作そのものだった。
さらに、本作に加え『スナッチ』(2000年)、『レザボア・ドッグス』(1992年)などの、犯罪コメディー作品を参考に、変装して図書館に侵入、およそ1,200万ドルの蔵書を盗み出す事件は、後の2019年、『アメリカン・アニマルズ』として映画化された。
遠くアジアでも2016年、バングラデシュ中央銀行のコンピューターにハッカーが侵入し、8,100万ドル(約88億6,000万円)が盗まれ、フィリピンに送金された事件が発覚。この事件は、銀行やマネーロンダリング防止策やカジノに精通し、ハッカーを雇って金を盗む手口が、本作に酷似し、「マニラ12」と名付けられた。
本作は、4年間の服役を終えて仮出所した凄腕詐欺師ダニー・オーシャン(ジョージ・クルーニー)が、刑務所で考えたという前代未聞の犯罪計画を企てる。「ポップコーンエンターテインメント(深みはないが何も考えずに楽しめるショー)」として高評価を得て、興行収入も莫大なものとなった。
そして、『オーシャンズ12』(2004年)、『オーシャンズ13』(2007年)と続編が製作され、2018年にはスピンオフ作品『オーシャンズ8』も公開されるなど、その人気は不動のものとなっている。
昔から映画は人に夢や希望を与えてきた。スクリーンに投影される登場人物の生き様に、人生の指針を得た人も少なくないだろう。観客の人生を左右してしまう映画のパワーは、時にネガティブなベクトルに向かい、悲劇や惨劇を生み出す。映画を愛する者であれば、映画の両義性をしっかりと認識した上で、人生を豊かにするポジティブな側面に影響を受けたいものだ。
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