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「鬼畜すぎる」実在の殺人事件がモデルの日本映画(5)。悪魔のサイコパス…無期懲役と死刑となった男の犯罪は?

text by 寺島武志

今回は実際に起きた殺人事件をベースにした日本映画を5本セレクト。実話ならではの血なまぐさいエピソードがてんこ盛り。香り立つ悪のバイタリティに圧倒されること間違いなし。映画の内容を紹介するとともに、モデルとなった事件の顛末も解説する。(文・寺島武志)

●リリー・フランキーがサイコパスを怪演。未だ謎に包まれた殺人事件の一部始終を描く

『凶悪』(2013)

監督:白石和彌
脚本:高橋泉、白石和彌
キャスト:山田孝之、ピエール瀧、リリー・フランキー、池脇千鶴

【作品内容】

本作は、1999年に起きた殺人事件「上申書殺人事件」を基に、獄中の死刑囚が告発した殺人事件の真相を「新潮45」編集部が報じ、首謀者の逮捕に至るまでを描いたノンフィクション小説を原作とした映画だ。

「上申書殺人事件」とは、死刑判決を受けて上訴中だった元暴力団組長・後藤良次が、殺人2件と死体遺棄1件の「上申書」を提出したことによって始まる。

後藤が慕っていた不動産ブローカー・三上静男は3件の殺人事件(石岡市焼却事件、北茨城市生き埋め事件、日立市ウォッカ事件)の首謀者として告発される。後藤に取材を続けていた『新潮45』がそれを報じると、三上が関与した殺人事件は刑事事件となる。

ピエール瀧
ピエール瀧Getty Images

後藤が上申書で告発したきっかけは、三上が首謀した殺人事件の報酬を受け取る約束が反故にされたことや、世話を頼んだ舎弟が自殺した際、舎弟の財産が三上に処分されたこと。上申書には三上や後藤の舎弟だけでなく、三上と関わりのある会社経営者や死亡者の家族らも、三上同様逮捕を免れた共犯としてリストアップされていた。

ジャーナリストとしての使命感と狂気の間で揺れ動く記者を山田孝之が演じ、警察も把握していない闇に隠れていた凶悪事件の告発と、その証言の裏付けを取るうちに事件にのめり込んでいく様を克明に描いている。死刑囚役をピエール瀧が演じ、リリー・フランキーが「先生」役で悪役に挑んでおり、監督は同作が初の長編作品となる白石和彌が務めている。

実際の事件は、告発されていた3つの殺人事件の内、日立市ウォッカ事件が保険金殺人として刑事裁判となり、三上は無期懲役、死亡現場に立ち会い三上と殺人の共謀をしていた後藤は懲役20年(後に死刑確定)。従犯だった舎弟は不起訴、保険金殺人の依頼をした被害者の家族3人に懲役13年から15年の刑が言い渡された。

死亡保険金が振り込まれた口座を不正開設した詐欺罪で死亡者家族2人が懲役1年、執行猶予3年が確定している。また、捜査中の2006年には、殺人の依頼を仲介したとされる工務店経営者が交通事故死を遂げるなど、未ださまざまな謎を残している事件だ。

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