「“光石研主演映画”を撮るのが目標だった」カンヌ映画祭ACID部門正式出品『逃げきれた夢』、二ノ宮隆太郎監督インタビュー
text by 山田剛志
名バイプレイヤーとして日本映画界を支える俳優・光石研。12年ぶりの単独主演作にして、故郷・北九州市を舞台にした映画『逃げきれた夢』が6月9日(金)より公開される。今年5月に開催された第76回カンヌ国際映画祭の「ACID部門」に正式出品された話題作。今回は、監督を務めた二ノ宮隆太郎さんのインタビューをお届けする。(文・山田剛志)
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【二ノ宮隆太郎 プロフィール】
1986年8月18日生まれ。神奈川県出身。2012年、初の長編作品『魅力の人間』が第34回ぴあフィルムフェスティバルで準グランプリを受賞し、海外映画祭でも好評を博す。 2017年、監督、主演を務めた長編第二作『枝葉のこと』が第70回ロカルノ国際映画祭の長編部門に日本映画から唯一選出される。2019年、長編第三作『お嬢ちゃん』が公開。同年、2019フィルメックス新人監督賞グランプリを受賞。『逃げきれた夢』の製作が決定する。本作が商業映画デビュー作となる。映画監督、脚本家、俳優として活動する。
主演・光石研との対話から物語を紡ぎ出す
本作は、北九州の定時制高校で教頭を務めている主人公・末永周平(光石研)が、とある出来事をきっかけに、人間関係を見つめ直していく姿を描いている。老人ホームで暮らす父、妻と娘、職場の同僚、地元の友達に元教え子。96分の上映時間中、スクリーンに映し出されるのは、周平の“半径5 メートルの世界”だ。
突き放すのでもなく、寄り添うわけでもない、主人公・末永に扮した光石研に注がれる眼差しには、今年デビュー45周年を迎えた名優に対する敬意が込められている。
「“光石研主演映画”を撮るのが一つの目標だった」と語る二ノ宮監督。企画が具体的に動き出したのは2018年だった。
「光石さんが、地元である北九州市黒崎商店街のPRコンテストの審査員を行うというので、シナリオハンティングがてら、僕もついて行ったんです。光石さんに地元を案内していただきながら、過去の話から何まで色々なお話を伺いました。この経験はそのまま、末永が吉本実憂さん演じる平賀に生まれ育った場所を紹介するシーンに繋がっています」