「不安って、人生を彩るちょっとしたスパイス」
『問題のレストラン』(フジテレビ系、2015)
キャスト:真木よう子、東出昌大、二階堂ふみ、高畑充希、松岡茉優、臼田あさ美、YOU、安田顕、菊池亜希子、風間俊介、菅田将暉、杉本哲太、吹越満、藤田弓子
【作品内容】
主人公の田中たま子は働くことが大好きな独身女性。勤め先が大手飲食会社に吸収合併され、男性優位の環境で新規店舗プロジェクトに参加する。セクハラやパワハラが横行する中、物件や料理人探しに奔走し、腕利きのシェフ・門司誠人と出会う。
【注目ポイント】
2015年に放送された同ドラマは、現代社会における女性やセクシャルマイノリティが被る差別をテーマに、理不尽な社会に立ち向かう女性たちの姿を描いた先進的な作品。
主人公のたま子(真木よう子)は、親友がとある事件をきっかけに会社を辞めたのを機に、自らも退職。彼女は、社会の不条理に苦しむ女性たちと共に、女性だけのレストラン「ビストロ フー」を開店する。しかし、女性を軽視する社会の風潮や、敵対する高級レストランの嫌がらせなど、さまざまな困難が立ちはだかる。それでも、仲間たちと共に自分たちの価値を証明しようと奮闘する物語だ。
本作の魅力はなんと言っても観る者に絶句を強いる、壮絶なセリフの数々だろう。
全裸で謝罪を強要されるといったとんでもないパワハラを受けて会社を辞めた五月(菊池亜希子)は「人は生まれると2分の1の確率で差別を受ける。痴漢に相当する罰は10年じゃ足りない。レイプに相当する罰は死刑だと思う」と日記に書き付ける。また、理想の妻を押し付けるモラハラ夫へ反論する妻の鏡子(臼田あさ美)は「夫を支えるために一生をささげた妻の話なんて私には呪いの言葉でしかなかった」と胸の内をぶっちゃける。
近年、朝ドラ『虎に翼』をはじめ、フェミニズムを主題にしたドラマが多く作られている。今から10年前に制作された『問題のあるレストラン』は、そうした流れを作った記念碑的な作品の1本だといえる。
一方で、フェミニズムを描くことにとどまらず、「人間の成長と仲間との絆」という普遍的なテーマを描いているという点も押さえておくべきだろう。
(文・阿部早苗)
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【了】