映画『エブエブ』とあわせて読みたい一冊
『銀河ヒッチハイク・ガイド』(河出文庫)
ダグラス・アダムス/安原和見訳
河出書房新社
SF映画やカート・ヴォネガットやテッド・チャンといったSF小説の参照が多い『エブエブ』だが、突き抜けた世界観の本作から真っ先に思い浮かんだのが本書。
銀河のバイパス建設のために邪魔だった地球はあっさり滅亡。たまたま生き残ったイギリス人アーサーは「銀河ヒッチハイク・ガイド」作成の取材中だった宇宙人・フォードとともに銀河を旅していく…。
冒頭からいきなり地球は滅亡するわ、不条理とブラックジョークのオンパレードで風呂敷は恐ろしく大きくて宇宙の真理まで到達するという、ケレン味とカオティックさは『エブエブ』との共通点が多い。とはいえ英国風コメディの皮肉が効いた笑いはバカバカしさの奥底から真の問題を炙りだす知的なエンタテインメントでもある。
本書から表層をかいくぐり深層のネタを汲み取る読書体験をしておくと、カオスで意図的に煙に巻こうとする『エブエブ』世界を抵抗なく受け入れることができるだろう。
(文・すずきたけし)
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