「同情するなら金をくれ」
今だったらコンプライアンスに引っかかりまくり!?
『家なき子』(1994)
上映時間:95分
監督:細野英延
原案:野島伸司
脚本:いとう斗士八、細野英延
キャスト:安達祐実、堂本光一、斉藤洋介、小柳ルミ子、古尾谷雅人、京本政樹、田中好子、丹波哲郎、桜井貴子
テレビドラマ版:『家なき子』1994/4/16~7/2(土曜21:00~)
製作局:日本テレビ
【あらすじ】
クリスマスイブの夜にケーキを盗み、店員に捕えられたみなし子のすず(安達祐実)は、サーカス団の団長である磯貝誠一(斎藤洋介)に救われる。しかし、磯貝の正体は子供たちを搾取する悪人だった。サーカス団で再会した、磯貝の再婚相手である元叔母・園田京子(小柳ルミ子)と園田真弓(西田彩香)から嫌がらせをされるなか、すずは堀口恵(桜井貴子)という仲間の少女が重病であることを知り…。
【注目ポイント】
オリジナル版テレビドラマは1994年に放送され、作中の主人公・すず(安達祐実)が発する「同情するなら金をくれ!」のセリフはテレビドラマ界の名言として残り、最高視聴率37・2%を記録する大ヒット作となった。
本作は、そんなすずの“その後”を描いたストーリーとなっている。伝説となったテレビドラマ版最終回から半年も経たずに、映画版が公開され、興行収入は17億9000万円を記録した。脚本家の野島伸司をヒットメーカーに押し上げた作品でもある。
映画版のストーリーは、相棒でもある犬・リュウと共に放浪を続けるすずが、クリスマスの夜にケーキを盗み捕まってしまうところから始まる。警察に突き出される前に、サーカス団の経営者でもある磯貝(斉藤洋介)が「ケーキの代金を肩代わりする」と親切心を見せるが、実は磯貝は身寄りのない子どもを集めては、サーカス団員として、不当な労働を強制するという“超ブラック企業”だった。すずとリュウも軟禁状態でサーカス団に連行されてしまう。
そこで起きる出来事はトンデモ設定のオンパレードだ。
すずに空中ブランコを強制し、それを成功させてしまうくだりもそうだが、県会議員が自らの保身のために、医師を買収して政敵を殺害。さらにサーカスのテントごと放火し、サーカス団員を焼死させるという、あまりに救いのない展開…。こうした描写が、現在にコンプライアンスでは許されず、一大ムーブメントを巻き起こした本シリーズは映画版もテレビドラマ版も、地上波では“再放送NG”という扱いとなっている。
安達祐実は、その後も活躍を続け、天才子役から本格派女優に成長したが、その源流には、この名作(迷作?)があったと知っている視聴者は、どのくらいいるのだろうか…。