失明した娼婦の結末は…? ジャッロ映画『ダークグラス』の評価は? “本のプロ”が魅力を徹底解説【映画と本のモンタージュ】
text by すずきたけし
映画から受け取った感動をまったく別の体験に繋げることで人生はより豊かになる。本コラムでは、ライターでブックレビュアーのすずきたけしさんが、話題の映画のレビューと共に、併せて読むことで作品理解が深まる本を紹介。“本のプロ”の視点から映画と書籍を繋げることで、双方の魅力を引き出す。今回は、ホラー映画の巨匠・ダリオ・アルジェントの10年ぶりの新作となる『ダークグラス』を考察。(文・すずきたけし)
【著者・すずきたけし プロフィール】
ライター。『本の雑誌』、文春オンライン、ダ・ヴィンチweb、リアルサウンドブックにブックレビューやインタビューを寄稿。元書店員。
ダリオ・アルジェントがジャッロ映画に原点回帰
“あの”ダリオ・アルジェント監督作としては『ダリオ・アルジェントのドラキュラ』(2012)以来10年ぶりの監督作である。アルジェント監督は、日本では70年代からのホラーブーム期において、『サスペリアPART2』(1975)、『サスペリア』(1977)、『インフェルノ』(1980)『フェノミナ』といった作品で人気を博しホラー映画の監督の印象が強いが、監督デビュー作『歓びの毒牙』(1970)のヒットにより、イタリア発祥である“ジャッロ映画”のジャンルを確立した代表的な監督として知られる。出自はホラー映画ではなく、“ジャッロ画”なのである。
イタリア語で黄色を意味する“ジャッロ(giallo)”というジャンルは、戦前にイタリアの出版社が外国の探偵小説やミステリー小説を翻訳出版した際に表紙を黄色系に統一したことから始まる。その後ノワール(黒)小説やスリラー小説など一連のジャンル小説をまとめて“ジャッロ”と呼ばれるようになり、“ジャッロ映画”と拡がっていく。
“ジャッロ映画”はホラーではなく、スリラーや犯罪、ミステリーといったテーマのほか、性愛性と攻撃性を描き、また精神分析学を映画表現に取り入れていているのが特徴である。
『ダークグラス』は、ホラー映画でなく、ジャッロ映画の一時代を築いたダリオ・アルジェント監督が原点回帰した、ジャッロ映画なのである。