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中国の陰陽五行思想を知れば理解が深まる!?
ハートウォーミングなフィンランド映画

『世界で一番幸せな食堂』(2019)

サウナーヨモギダ
写真Wakaco

―――次に、これまたフィンランド産のロマンスコメディ映画ですね。

「はい、たまたまなんですが。フィンランド北部のある食堂に、中国人親子(チェンとその息子)が訊ねて来るんですね。チェンはかつてお世話になった恩人を探すためにこの地を訪れた。で、店を一人で切り盛りをしている女性・シルカは、料理人であるチェンにお店を手伝ってもらう代わりに、その恩人探しを手伝うようになるんです」

―――異人種交流的な設定に、まず惹かれますね。

「ええ。ただ、その国民性の違いとチェンのクールな性格から、2人の距離はなかなか縮まらないんですよ。

でも、ある日、中国人団体客が来た際に、「不味い!」と不評だったシルカの料理に代わって、チェンが中国料理を振る舞い、お客さんは大喜びするんです。

そこから、徐々にシルカやそこにいた他の常連客とチェンも仲良くなっていって。ゲームばかりやっている思春期の息子も心を開いていく。そんなハートウォーミングな流れがグッときます」

―――なるほど。

「あと、中国には『陰陽五行』という、春秋戦国時代ごろに発生した陰陽説と五行説、それぞれ無関係に生まれた考え方が後に結合した思想があるのですね。シルカとチェンの関係をその思想を理解した上で、観るとより面白いですよ。

『陰陽五行』に深く結びついている太極拳を、チェンが行うシーンもありますし。そういった裏設定も深い作品です」

―――おお!さすがの考察です。

「人種の違い、性別の違い、親と子など、レベルを異にする複数の関係性が和解に向かっていく。それがこの物語の落としどころですね」

―――サウナはどこかの場面で登場しますか?

「普通に出てきますね。お店の常連客がチェンを連れてサウナに行くのですが、そこで『自分に向き合えよ』と、伝えるんです。先ほど挙げた『サウナのあるところ』でもそうなのですが、フィンランド人にとっては日常の場であるサウナが、とても効果的に使われています」

―――チェンの恩人は、結局、見つかるのでしょうか?

「いえ、その恩人はもう死んでいるという結末です。ただ、それを知るまでに関わったシルカを始めとした人々との心の通わせ合いが見ものですね。あと、息子との山登りの道中で、奥さんを事故で亡くしたショックから立ち直るシーンも好きですね」

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