暴力を愛する悪徳地主を嬉々として怪演
初のタランティーノ作品で当たり役
『ジャンゴ 繋がれざる者』(2012)
原題:Django Unchained
監督:クエンティン・タランティーノ
脚本:クエンティン・タランティーノ
キャスト:ジェイミー・フォックス、レオナルド・ディカプリオ、クリストフ・ヴァルツ、ケリー・ワシントン、サミュエル・L・ジャクソン
【作品内容】
南北戦争が勃発する直前のアメリカ・テキサス。ドイツ人の賞金稼ぎシュルツ(クリストフ・ヴァルツ)は、追跡中の賞金首をとるため、黒人奴隷ジャンゴ(ジェイミー・フォックス)と旅を共にすることに。奴隷制に反対のシュルツは、賞金首を仕留めるとジャンゴを解放し、賞金稼ぎの相棒にするのだった。
クエンティン・タランティーノの長編8作目となる、元奴隷の黒人ガンマンを主人公とする異色の西部劇。ディカプリオは、黒人奴隷を虫けらのように扱う、悪徳農園主を好演。珍しい助演での出演作ではあるが、その迫真に満ちた演技は各方面から絶賛された。
【“ブチギレ”ポイント】
黒人奴隷たちを闘犬扱いし、傷つけ合う姿を見て楽しむ。そんな残酷極まりない男・カルヴィン・キャンディに扮したディカプリオ。初めて演じた悪役であると言っていいだろう。
『キャッチ・ミー・イフ・ユー・キャン』(2002)や『アビエイター』(2004)で演じた役柄も、決してクリーンなキャラクターではなかったが、内面の苦悩が深く描かれることによって、反道徳的な振る舞いもどこか人間臭く、共感のまなざしで見つめることができた。
しかし、本作で演じたカルヴィン・キャンディは倫理性ゼロ。情状酌量の余地はない、正真正銘のクズである。ジャンゴとシュルツの訪問を受け、初めは紳士的な態度で受け入れるが、2人の目論見を見抜くと、突然激昂。机を思い切り叩いた拍子に出血し、血まみれの手で黒人女性の髪をつかみ、机に押さえつけるサマはまさに悪魔。ちなみに、ディカプリオの出血はアクシデントであり、映っているのは血糊ではなく、本物の血液である。
タランティーノならではの長台詞を見事にものにしつつ、徐々に怒りのボルテージを上げ、アクシデントをも味方につけて、映画史に残る“ブチギレ”シーンを残したディカプリオの演技に圧倒されること間違いなしだ。