Jホラーの傑作。貞子が象徴するものとは?
『リング』(1998年)
上映時間:95分
監督:中田秀夫
原作:鈴木光司
脚本:高橋洋
キャスト:松嶋菜々子、真田広之、中谷美紀、沼田曜一、雅子、竹内結子、佐藤仁美、松重豊、村松克己、大高力也
【作品内容】
テレビディレクターの浅川玲子(松嶋菜々子)は、「見ると一週間後に死ぬ」と巷で噂されるビデオテープの存在を知る。 親戚の娘も犠牲になったことを知り調査を開始するが、玲子自身もそのビデオを見てしまう。
玲子は元夫である大学講師・高山竜司(真田広之)に相談し、ビデオの映像を分析。 三原山の噴火に関係があることを突き止めた彼らは、大島へ向かうが・・・。
呪いのビデオが巻き起こす惨劇を描いた鈴木光司のベストセラー小説を、「女優霊」の中田秀夫監督&高橋洋脚本で映画化し大ヒットを記録したホラー映画。
ジャパニーズホラーブームの火付け役となり、2002年にはハリウッドでリメイクされるなど、その人気は日本国内には留まらない。
特に新たなホラーヒロインとなった貞子は、そのビジュアルもさることながら、悲しい過去や背景なども魅力的なキャラクターとして人気を博している。
正統な続編として「らせん」(1998年)であるが、翌年にオリジナルストーリーである「リング2」(1999年)が公開され話題を呼んだ。
【注目ポイント】
呪いの元凶である貞子がなぜ呪いを振り撒いているのか?その目的について考察が繰り広げられている。
貞子の呪いを解くため、浅川(松嶋菜々子)や高山(真田広之)が謎に立ち向かうが、結果として貞子の呪いの原因や目的はしっかりとは描かれていなかった。
だからこそ貞子の呪いや目的の意味について観客に解釈が求められることになり、様々な考察が繰り広げられているのである。まさに貞子の呪いが観客の考察を通じて拡大していった、といっても過言ではないだろう。
呪いの元凶である貞子がラストシーンまで全身像を表さないのも、本作の注目ポイントである。
通常のホラー映画であれば、幽霊や殺人鬼がバンバン登場し、観客を恐怖に陥れていくものであるが、本作は独特な映像や音響で少しずつ観客の恐怖心を高めていき、ラストシーンの貞子登場で恐怖をピークまで持っていくことに成功している。
このような恐怖演出も本作が今もなお愛されている理由の1つである。また呪いを防ぐ方法として、「呪いのビデオをダビングし、次の人に見せる」という手段が講じられるが、この行為は現代社会におけるコンピューターウィルスのメタファーと捉える考察もある。
実際にハリウッドでリメイクされた『ザ・リング』(2002年)や『ザ・リング2』(2005年)では、貞子はコンピューターウィルスのような存在として描かれている。
今回紹介した邦画5選は、いずれも日本映画史のみならず世界映画史にも影響を与えた名作ばかりだ。黒澤明監督の「羅生門」を始めとして、どの映画も事件や出来事の真実を観客の判断に委ねているところがポイントである。
それが多くの映画ファンの心を掴み、多くの考察が繰り広げられている理由でもある。少し癖がある映画もあるが、ここはひとつそれぞれの作品の世界観に浸ってみるのもよいのではないだろうか?
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