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すれ違うふたりを美しい映像と効果的な演出で描く

©2022 劇場版美しい彼eternal 製作委員会

平良と清居のように、対極な属性のふたりが惹かれ合うストーリーはBLコンテンツにおいて非常によくある設定である。では、『美しい彼』がここまで人気作品となったのはなぜなのだろうか。他のBL作品とは一線を画す魅力を紐解いていきたい。

恋をした時の瑞々しい感情や葛藤を美しい文体で紡ぐ世界観が、本シリーズの大きな特徴だ。

好きで好きで、好きすぎて満ち足りない。そんな清居に対する切ない想いを、満月になる直前の「14番目の月」だと平良は形容する。このように文学的な表現は、さすが直木賞候補にも選ばれた凪良ゆうの手腕であるが、テレビドラマ・劇場版では原作で積み上げられた空気感を継承しつつ、映像作品ならではの見せ方にもこだわっている。

平良と清居が出会う高校生活のシーンでは、淡い光を多く含んだ撮り方をしているが、高校卒業後の場面では彩度が上がり、パキッとした印象の映像へと変わる。これはふたりの関係性における原点が、きらめいた青春時代の中にあることを印象付けるためだろう。

また、ふたりのすれ違う想いを効果的に演出する構成にも注目したい。

ドラマ『美しい彼』(MBS/TBS)は、「地球は丸いなんて言われているけど、本当は三角形のピラミッドだ」という平良のモノローグで始まる。美しい清居を自分だけのキングだと崇め奉り、何度キモいと吐き捨てられても決して折れない平良による一人称でドラマは進み、その並々ならぬ執念深さに視聴者はまず圧倒される。「推し活」なる言葉が浸透した今、そんな平良に共感を覚える者もいるかもしれない。

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