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BL特有ともいえる視点切り替え方式が
視聴者を物語に引き込んだ

©2022 劇場版美しい彼eternal 製作委員会

しかし、5話から物語は突如清居視点へと切り替わるのだ。

清居の語りを聞くことで、平良への想いが変化していく彼の心の機微を視聴者ははじめて知ることになる。

この視点切り替え方式はBL作品では度々使用される手法だが、BLに馴染みのない一般視聴者には斬新に映ったのではないだろうか。そして、ストーリーと登場人物を多面的に見せるこの演出こそが、視聴者を物語にぐいぐい引き込む効果を高めている。

平良は常に自分を卑下し、清居と想いが通じ合ってからもなお「ふたりの世界なんて烏滸がましい。俺は明らかに、清居の隣に相応しくない」と、勝手に片思いを続行しようとする。素直になれずぶっきらぼうに振る舞う清居が俺様体質なのは言うまでもないが、ネガティブな自分を決して変えようとしない平良も、実は方向性の違う「俺様」なのである。

俺様同士が付き合っても上手くいくはずがなく、ふたりの気持ちは平行線を辿るどころか離れていく一方だ。

両者から語られる相手への想いを知っている視聴者は、ふたりの不器用でままならない恋路に頭を掻きむしりたくなる衝動に駆られる。そして、そんな不安定なふたりだからこそ、お互いを理解し、心が通い合った時のカタルシスは最高潮に達するのである。

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