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子どもの頃アニメで親しんだ「ねずみ男」を見事に体現

『ゲゲゲの鬼太郎』(2007)

ねずみ男/大泉洋

大泉洋【Getty Images】
大泉洋Getty Images

監督:本木克英
原作:水木しげる
出演:ウエンツ瑛士、井上真央、田中麗奈、大泉洋、間寛平、室井滋、西田敏行、小雪、中村獅童、谷啓

【作品内容】

ある街でテーマパーク建設に反対する団地住民の運動が起こっていた。その最中、テーマパーク開発側と組み金儲けを画策するねずみ男。鬼太郎は、ねずみ男に誘われた妖怪たちを止めに入るが、近隣の稲荷神社に封印されていた「妖怪石」をねずみ男が盗むことにより、事態は大変な騒動に発展する。

【注目ポイント】

1960年代から現在に至るまでアニメ化が相次ぐ不朽の名作をウエンツ瑛士、井上真央、田中麗奈といった当時の人気者をメインキャストに配して実写化したのが本作。しかし、コンピューターグラフィックスがすでに一般化した2007年時点の技術を以てしても、キャラクターのコスプレ感、リモコン下駄をはじめとする必殺技の言いようのないチープさは払拭できず、改めて漫画実写化の難しさを世間に知らしめる結果となった。

キャラクター再現度に関してもネガティブな意見が飛び交う中、賞賛の声を一身に集めているのは、ねずみ男役の大泉洋である。大泉には、漫画原作であろうと何だろうと、持ち前のキャラクター性を駆使して、どんな役柄も良い意味ですべて自分のものにしてしまうところがある。

普通に考えると、ねずみ男のような風体の妖怪が町を歩いているのは、非常におかしい。にもかかわらず、大泉洋は、異質感を逆手にとって特異な魅力を発揮することに成功しているのだ。

本作のメインはあくまで鬼太郎であり、ねずみ男が活躍するシーンが豊富にあるわけではない。ただ、大泉洋の変幻自在の表情、観る者の心をくすぐる小賢しい語り口調が、子どもの頃アニメで親しんだ、ねずみ男らしさをしっかりと醸し出していて、憎めない。

ちなみに、田中麗奈扮する猫娘もいい味を出しているが、厳しい言い方をすれば、それはあくまでビジュアルがハマっているということに過ぎない。しかし、大泉洋のねずみ男へのなりきりぶりは、原作のたんなる再現を超えて「現実にねずみ男が存在するとしたら?」という問いに対する完璧な答えになっている。

大泉洋は、近年稀に見る、ストーリーは二の次で「この人を見たいからこの映画を観たい」と思わせる俳優である。2007年公開の本作でも十分にその風格は感じられる。そのことを確認するだけでも一部で悪名高い実写版鬼太郎を鑑賞する価値はあるだろう。

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