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孤軍奮闘といってもいい活躍を見せる

『嘘喰い』(2022)

斑目貘/横浜流星

横浜流星【Getty Images】
横浜流星Getty Images

監督:中田秀夫
原作:迫稔雄
脚本:江良至、大石哲也
出演:横浜流星、佐野勇人、白石麻衣、本郷奏多、櫻井海音、村上弘明、三浦翔平、野村祐希

【作品内容】

天才ギャンブラー「嘘喰い」こと斑目貘が、日本の政財界・裏社会をも支配する会員制の闇ギャンブル倶楽部「賭郎」に、パチンコ店で知り合った多重債務者である梶隆臣(佐野勇斗)と会員制の闇ギャンブル倶楽部“賭郎”に挑む。凶悪なイカサマ師たちとの頭脳心理戦であり、嘘対嘘の世界。そこでは殺し合いも巻き起こる。

【注目ポイント】

映画『リング』(1998)などの中田秀夫監督がメガホンを取った作品。人気漫画&人気監督のコラボレーションということもあり、公開前、期待は高まっていたのだが、興行収入は3億円にも届かず大コケ。コロナ禍であることを鑑みても異常事態だ。

とにかく、原作の改変がキツい。

暴力団鞍馬組の女組長であり「賭郎」会員である鞍馬蘭子(白石麻衣)は中途半端なヒロインになり下がり、「最怖の女」としての風格がまったくない。また、「賭郎」会員であり、国際指名手配中のテロリストである、佐田国(三浦翔平)が闇落ちしたイケメン研究者というアレンジも正直意図を計りかねる。また、解離性同一性障害を持ち、注射をトリガーとして凶悪な人格・ロデムが発動するマルコ役(野村祐希)も残念ながらまったく強そうに見えない…。

もし原作未読であれば、これらの部分はあまり気にならないかもしれない。しかし、原作の緊迫感みなぎる会話シーンを知っている者からすると、キャラクターが全体的にチープに見えてしまう。映画『ライアーゲーム』(2010〜)のようにドラマ版から映画版に移行する形であれば、また見違った見方ができたかもしれないと思うと残念だ。

そんな中、唯一、目を引く存在感を見せたのは、他でもない主役の斑目貘を演じた横浜流星である。白スーツをスタイリッシュに着こなし、その再現度は立派なもの。また、原作ファンから特に評価されたのは、斑目貘が勝利を確信した時などに「カリカリ梅を食べる」という所作である。

その演技自体、サマになっていて素晴らしいのだが、元々は「(貘が)ハーモニカを吹く」というくだりも用意されていたといい、それに対し横浜は、「貘の持ち物はカリカリ梅だけ」と原作の設定を尊重して、製作陣の提案を賢明にも却下したという。なんとも勇ましいエピソードではないだろうか。

ただし、これは、横浜流星が悪いわけでも何でもないのだが、せっかく空手の有段者である横浜流星を起用するならば、原作にもあるアクションシーンをもっと導入してほしかったという思いは禁じ得ない。

頭脳戦中心のストーリーなので、彼の個性を十分に活かせていないという点は悔やまれる。とはいえ、孤軍奮闘と言ってもいい活躍をみせた横浜の役者としての器量は、作品への評価とは別に、正当に褒め称えられるべきだろう。

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