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武力制裁も辞さずに真実を追い求める…世間を震撼させた衝撃作

『ゆきゆきて神軍』(1987)

『ゆきゆきて、神軍』の監督・原一男の公式インスタグラムより
ゆきゆきて神軍の監督原一男の公式インスタグラムより

監督:原一男
出演:奥崎謙三、奥崎シズミ

【作品内容】

太平洋戦争の激戦地であり飢餓地獄と言われたニューギニア戦線で生き残り、“神軍平等兵”を自称する奥崎謙三の破天荒な言動を追うドキュメンタリー。

【注目ポイント】

あのマイケル・ムーアが“生涯に観た映画の中でも最も優れたドキュメンタリー”と評し、公開されるやいなや単館系作品、しかもドキュメンタリー作品としては異例のヒット作品となった。

賞レースも席巻してキネマ旬報ベストテン2位(読者部門1位)など高い評価を得た。監督の原一男はここから日本のドキュメンタリー映画界を支える存在となっていく。

“神軍平等兵”・奥崎謙三は戦時中に起きた兵士殺害事件の真相を追い求め行く。しかし、複数の罪で服役経験もある奥崎の手法は時に鉄拳制裁などの暴力的なものにまで及び、途中まで彼と同行していた兵士の遺族たちは同行することを辞めている。

それでも止まらない奥崎は遺族の代理を強引に立てて(身内の関係者に遺族役を演じさせて)元上官が犯したとされる犯罪を問い詰めていく。

一応ドキュメンタリーという枠組みの作品ではあるものの、言動のすべてが真実に根ざしているかどうか判然としない奥崎の恣意的な行動をそのまま映し出しているため、“ありのまま”でありながら限りなく作られた物語に近い感触をもたらす。唐突な幕切れも鮮烈である。

今回、これらの作品を2024年の視点で“コンプラ違反”という括りで書いたものの、製作当時の視点で見ても“攻めている”作品群となった。

“攻めている”と言えばいい響きだが、正直な表現をすれば当時の時点でもフェアとアンフェアの境界線上を行ったり来たりしている作品ばかりである。つまりはあちらの側に足を踏み入れかけた作品群というわけで、その分“時代を超越した危うさ”と“心をつかんで離さない怪しさ”があるのもまた事実である。

(文:村松健太郎)

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