ルームメイトの中絶を助けるために奔走
とある女子大生の息づまる一日
『4ヶ月、3週と2日』(2007)
原題:4 luni, 3 săptămâni și 2 zile
製作国:ルーマニア
監督:クリスティアン・ムンジウ
脚本:クリスティアン・ムンジウ
キャスト:アナマリア・マリンカ、ローラ・ヴァシリウ、ヴラド・イヴァノフ、アレクサンドル・ポトチェアン、ルミニツァ・ゲオルジウ、アディ・カラウレアヌ
【作品内容】
舞台となるのは、独裁政権下にあった80年代のルーマニア。女性大学生のオフィーリアは、ルームメイトから妊娠を告げられ、違法中絶の手はずを整えるべく奔走するが、その過程で思わぬトラブルに巻き込まれていく…。
カンヌ国際映画祭で並み居る強豪を押しのけ、最高賞であるパルムドールを受賞。監督のクリスチャン・ムンジウは本作の成功を機に、世界的な名匠へと駆け上がった。
【注目ポイント】
誰にでもあるような、思い出したくもない1日。本作の主人公オフィーリアにとっては、その日がそんな1日だったのではないだろうか。
『4ヶ月、3週と2日』は、妊娠をしたルームメイトの違法中絶の手助けをする女性・オティリアの1日を描いた物語で、第60回カンヌ国際映画祭でパルムドールを受賞した作品。メガホンを取ったのは、ルーマニアの映画監督・クリスティアン・ムンジウである。
本作の舞台は、チャウシェスク大統領による独裁政権下のルーマニア。現在も中絶には大きな心理的・精神的負担は伴うが、当時のルーマニアでは、法律で禁止されていた。そこで彼女たちは、違法な闇医者にすがることになる。本作では、彼女たちの焦燥感を、手持ちカメラのワンシーン・ワンカットで臨場感たっぷりに生々しく描いている。
また、主人公の足取りとともに、無機質で寒々とした風景が画面に映し出される。かつての共産圏にありがちの、どこか暗く陰鬱な風景。しかし、閉塞感漂う状況から、なんとか生を紡ごうとする人々の確かな息遣いを感じさせる。オティリアに必死で助けを求めるガビツァもその一人。生きるとは何かを考えさせる、鑑賞者の腹の底にずしんと響く作品である。