髙橋海人『95』(テレビ東京系)
【注目ポイント】
テレビ東京の開局60周年連続ドラマとして制作された本作。舞台は、1月17日に阪神淡路大震災が、3月20日には地下鉄サリン事件が起き、バブル崩壊後、低迷する日本経済も相まって、社会不安が増大していた1995年の渋谷だ。当時の渋谷といえば、「チーマー」と呼ばれる不良少年が跋扈し、東京の繁華街の中で、最も治安の悪い街だった。
「日本の音楽産業の30年」について取材を受けていた広重秋久(安田顕)が、“あの頃”を回想する形で物語が進行し、高校時代の秋久を演じたのが髙橋海人だ。
地下鉄サリン事件の映像をニュースで見た秋久(髙橋海人)は、人は簡単に死ぬということに衝撃を受け、思わず手向けの花を手に、事件現場の霞ヶ関駅に向かう。
そんなとき、いわゆる“お坊ちゃん学校”の星城学院の同級生・鈴木翔太郎(中川大志)に呼び出され、マルコ(細田佳央太)、レオ(犬飼貴丈)、ドヨン(関口メンディー)のいるチーム「星学ボーイズ」に入れられる。
秋久は「Q」とあだ名を付けられチーマーとして行動を共にするのだが、ひょんなことからアイドル雑誌の表紙を飾り、有名人になってしまう。
自らの意思とは違うところで周辺の環境が変わっていくことに、戸惑う秋久。チーマーなのに悪の道を突き進むことにためらいがあり、思いがけず周囲にチヤホヤされる一方で、思いを寄せるセイラ(松本穂香)からは距離を置かれる思春期の少年を好演している。
ガムシャラに生きているのだが、その行動が空回りし、自分が進むべき道を見失う高校生を、その豊かな表情やセリフ回しで表現している髙橋。困難が立ちはだかる度に、目が泳ぐような演技には秋久自身の心の迷いを上手く表している。
1995年にはまだ生まれていない髙橋に限らず、高校生を演じるには無理がありそうなキャストなのだが、当時のませたチーマー高校生を表現するにはちょうどいい俳優が並び、不思議と不自然さを感じさせない。
当時のファッションや音楽、ポケベルやテレホンカードなどのアイテムも登場し、1995年当時の世界観を再現している点も注目だ。
(文・寺島武志)
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