人間はどこまで残酷になれるのか…。
狂犬のような村人たちに震える
『ドッグヴィル』(2003)
監督・脚本:ラース・フォン・トリアー
出演:ニコール・キッドマン、ポール・ベタニー、クロエ・セヴィニー、ローレン・バコール、ジェイムズ・カーン、パトリシア・クラークソン、ベン・ギャザラ
【作品紹介】
ロッキー山脈の麓に孤立する村ドッグヴィル。ある日この村の近く、ジョージタウンの方向から銃声が響いた。その直後、村人の青年トムは助けを請う美しい女性グレースと出会う。間もなく追っ手のギャングたちが現われるが、すでに彼女を隠し、その場を切り抜けるトム。
彼は翌日、村人たちにグレースをかくまうことを提案した。そして、“2週間で彼女が村人全員に気に入られること”を条件にという提案が受け入れられる。こうしてグレースは、トムの計画に従って肉体労働を始めることになるのだが…。
【注目ポイント】
前半は村人とグレースのやり取りが平和的でフレンドリーだが、状況は徐々に変化していく。村人たちは最低最狂なクズ人間集団であり、最悪の行為をグレースに行うのだ。
彼女を襲うために男たちが小屋の前で順番待ちをしているシーン、鬼畜な場面は後を絶たない。男たちは村のルールを守っているのだろうか、ちゃんと順番待ちをしている。そのあたりのディテールにも嫌悪感を感じる。
こういった不快極まりない描写が、実に3時間も展開されるのである。人間の狂気や卑しい本能を描きたいのはわかるが、何にしろ尺が長すぎる。
また「人間は生まれ育った環境で人格が形成される」、「状況下によっては誰しも鬼畜になる」といったメッセージも描きたかったのかもしれないが、後味があまりにも悪すぎる。グレースがなぜか理知的に村を消滅させるというオチにも納得がいかない。2000年代を代表する胸クソ“村映画”の一つと言っていいだろう。