濡れ場のシーンで色気漂う
山田のゆるいクズっぷりを味わえる
『乱暴と待機』(2010)
監督:冨永昌敬
脚本:冨永昌敬
原作:本谷有希子
キャスト
山根英則:浅野忠信
緒川奈々瀬:美波
番上あずさ:小池栄子
番上貴男:山田孝之
【作品内容】
古びた家が並ぶ市営住宅街。そこに暮らす奈々瀬(美波)は、人の目を気にしてオドオドしてばかり。血の繋がりがない英則を「お兄ちゃん」と呼んで同居している。そんなある日、近くに奈々瀬の高校時代の同級生・あずさ(小池栄子)と無職の夫・番上(山田孝之)の夫婦が越してくるのだが…。
映画化された「腑抜けども、悲しみの愛を見せろ」をはじめ、小説家、劇作家として注目を浴びる本谷有希子による、第50回岸田國士戯曲賞最終候補作。メガホンをとったのは『パンドラの匣』、『あの頃。』で知られる冨永昌敬。
【注目ポイント】
妊娠中の妻に隠れて、近所に住む奈々瀬と不貞行為を繰り返す役を演じており、これまで紹介してきた作品と比べ、今回はまた一味違った種類のクズを楽しむことができる。
行為をやんわり拒む奈々瀬に対して、「積極的に麻痺していこうよ」という、一度聞いたら忘れられないパワーワードを炸裂させる。こんな夫と結婚したあずさ(小池栄子)が不憫に見えてならない。
無責任でだらしなく、やっていることは最低だが、映画を観ているうちに、どことなく抜けている彼が可愛く見えてくる。普段は無造作な髪とヨレヨレの服だが、濡れ場のシーンではさすがの色気が漂う。
登場人物4人で行う絶妙な掛け合いがクセになる。暴力などの過激な演出が苦手な方は、ぜひ本作で、山田のゆるいクズっぷりを味わってほしい。