不毛そのものの20代を思い出す
中年になって良さに気付いた桑田佳祐監督作
『稲村ジェーン』(1990)
―――最後の1本が国民的ミュージシャン・桑田佳祐さんの初監督作品『稲村ジェーン』です。意外なセレクトだと思いました。
「公開当時、『ダイ・ハード2』が流行っていたんです。それで、『ダイ・ハード2』を観た後に、勢い余って何の興味もなかった『稲村ジェーン』を観てみたんですよ。そしたら、意味が分からなくて(笑)。それから月日が経って、YouTubeのスタッフさんに『今の永野さんが観たら、面白いと思うかも』と勧められて、2021年にBlu-ray化されたので、買って鑑賞したんです。そしたら、やっぱり、意味が分からなかったんですよ(笑)」
―――それが、またどうして、今回セレクトしようと思ったんですか?
「いや、意味が分からないと思いつつ、観た後に何か引っかかるものがあったんですね。最近、とある事情ですごく行きたくないロケ番組の仕事があったんです。現実逃避したくて何となく『稲村ジェーン』を再見したら、心に引っかかっていた部分が全てわかったんです」
―ほう!
「公開当時、20歳くらいだった僕と、登場人物たちの行動が、重なって見えたんですよ。夢はあるけど何もやっていないような、スカスカで不毛な日々。無駄に友人とつるんで、ドライブ、ゲーセン、ビリヤード、ボーリングにうつつを抜かしてね…。『稲村ジェーン』では、本当に何の意味もない若者の日常が描かれているのですが、当時の自分、そのままだなと。僕はもちろん、映画に出てくるようなイケメンではなかったですが(笑)。メインキャストが加勢大周に清水美沙、的場浩司といった当時、旬な俳優たちで、金を無駄使いしているところも好きな理由です(笑)」
―なるほど(笑)。他に好きなポイントはありますか?
「音楽は桑田佳祐さんによるものですし、素晴らしいです。ある意味で贅沢な作品ですよねえ。ちなみに僕、自分のYouTube番組でこの映画に関して言及したら、桑田佳祐さんがラジオで喜んでくださったんですよ!」
―すごいっすね!いつか、『映画チャンネル』で対談してもらえませんか?
「そんな機会あるなら、ぜひ! てゆーか、そんな機会、作ってください! でも、最後のシーンは意味がわからないんですよ。なんか海から? CGだか何だかわからないような波が押し寄せて、主人公が“浮く”という謎のオチで(笑)。ああ、今思うと、不毛な青春映画って、なんか最後に“浮いている”ような気がするなあ…『レポマン』とか。しかも、“浮く”描写は、CGではなく、ちゃんとワイヤーで釣られているような。『ダークナイト』も最後、ジョーカーが宙づりになるでしょう。僕、クライマックスで“浮く”映画に弱いかもしれないです(笑)」
話しが四方八方に脱線しまくる、ジェットコースターのようなインタビューであったが、永野さんが20代のころに尻を叩かれた『グッドフェローズ』に始まり、最近になって魅力に気づいた『稲村ジェーン』へと話はつながっている。今回セレクトしていただいた5本の映画を視聴することで、永野さんの人生に思いを馳せてみるのも、乙な楽しみ方かもしれない。
(文・ZAKKY)
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