『ショーシャンクの空に』はなぜアカデミー賞を獲れなかったのか?
映画好きであれば一度は観ておくべき名作として名高い『ショーシャンクの空に』。2015年には、「文化的、歴史的、芸術的に重要な映画」として、アメリカ国立フィルム登録簿に保存されるなど、公開から月日が経つにつれて、作品評価はうなぎ上がり。
現在となっては不朽の名作として愛されている『ショーシャンクの空に』だが、公開当時、興行面ではまったくと言っていいほど振るわず、興行収入は1600万ドル(約21億円)だった。ちなみに、ハリウッドにおけるヒット映画の目安は、1億ドル(約130億円)である。
ヒットに恵まれなかった理由としては、“刑務所映画”というサブジャンル自体の不人気、女性キャラクターの欠如(それは本作を魅力的にしている要素の一つではある)などが囁かれているが、おそらく複数の要因が絡まり合った結果、“地味な映画”というレッテルが貼られてしまったのだろう。
SNS全盛の現在であれば、『ショーシャンクの空に』程の名作であれば、大絶賛の口コミが瞬く間に広がり、集客面においてここまで苦戦することはなかったに違いない。しかし、言うまでもなく、本作が公開された1994年はインターネットが広く普及する前だ。
劇場公開が終わり、VHSの発売が始まると、『ショーシャンクの空に』の評判はじわじわと広がりを見せ、1995年の全米ビデオレンタルランキングで第7位に食い込むなど、作品を支持する人の数は、劇場公開時の何倍もの規模に。
第67回アカデミー賞の授賞式が行われたのは、1995年3月27日。『ショーシャンクの空に』の評価が確立する前にジャッジが下されたわけである。つまり、『ショーシャンクの空に』がアカデミー賞で惨敗した背景には、興行的な失敗にともない、正当な評価を受けるタイミングが遅れたことが影響していると思われるのだ。