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「原作を読んでいる方が観た後にガッカリしないための工夫」
企画に至るまで

©綾辻行人/講談社 ©NTV
©綾辻行人講談社 ©NTV

―――映像化のオファーの際、綾辻先生からは「傑作にしてください」というお言葉をいただいたそうですが、映像化するにあたって何か指示などはありましたか?

「最初に『できるんですか?』という話を前提として『こうやります』とお話ししました。説明後も『なるほど!』ってリアクションではなかったです(笑)。

映像の見せ方のことですし、言葉で簡単に伝えられるほどシンプルな方法でもないので、誰しも観ないとわからないのが正直なところだと思います。最後は「安楽椅子を7本やった内片が言うんですから!」と熱意で納得していただいたというか。

『傑作にしてください』というのは、綾辻さんからすると、全てひっくるめて上手いことやってください、ということだと思うんです。お客さんを裏切らないように。原作を読んでいる方が映像作品を観た後にガッカリしないための工夫をして欲しい、っていう想いだと思うんですね。

これはご本人も仰ってましたけど、『映像は映像のプロが作るものであって、自分は小説のプロであるから、自分がそこに口出しをするものではない』と。そこは内片監督を信用するぞ、と。だからこそ『傑作にしてください』が余計に怖いという(笑)」

―――それはとても怖いですね。では、本作が具体的な企画として動き始めたのはいつ頃からでしょうか?

「綾辻先生にお話しするために、プロデューサーの木下さんと京都に行ったのが、2017年の7月30日です。もちろん、その前からどうすれば出来るのか、ということは考えていました」

―――7年かけてここまで来られたという。

「そうですね、そんなにかかったんですね!(笑)」

―――最初から、映画でなく連続ドラマの形式で考えられていたのですか?

「映画の2時間では『十角館の殺人』は描けない。ミステリーの映像化で難しいのは、尺調整のために何か要素を切ると、齟齬が絶対に生まれるところ。

基本的にはトリックは変えない方が良いと僕は思っているんです。ミステリー作品をやる場合、可能な限り原作をそのままやるようにしないと、元の風味も失われるし、ロジックが破綻したトリックを修正するのは凄く難しい。

それができるなら、自分で小説書けますよね(笑)。映画の2時間だと登場人物が減ったりとかしないと、尺が収まらなくなるんですよね。登場人物1人ひとりのエピソードも短くなるから、やっぱり最低5話は必要だろうというのは、最初から思っていました」

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