1999年に地球は終わるという呪縛
さて、ドラマの第一話は1995年3月20日の地下鉄サリン事件からスタートし、第二話はチーマー、第三話は読モ雑誌と、1995年の事件とカルチャーを織り交ぜながら「混沌」は進んでいる。
そして、その混沌の要因の一つに、秋久の愛読していた本『ノストラダムスの大予言』(祥伝社)がある。1973年発刊され、これは時代を超えたベストセラーとなった。
そしてこの本に書かれていた、
「1999年、7の月 空から恐怖の大王が降ってくる」
という意味深な1行が、「1999年世界は終わる」と解釈され、日本全国、特に小・中学生を中心に広まったのだ。1999年という9が並んだ数字もまた「終わり」を思わせ、真実味があった。
この呪縛は、多くの人の心の奥の奥に残り、バブル崩壊以降の不安で再び覚醒する。そして、オウム真理教の存在、地下鉄サリン事件、阪神大震災などが重なり、やたらと現実味を帯びていった。
ただ、その先が見えない、怖いことばかりが起こる鬱々とした時代、こんなことが永遠に続くよりは、いっそ終わってほしいと願う空気も1995年にはあったのだ。
その「死に向かう感覚」を漂わせている役が、松本穂香が演じる岸セイラ。あんなにキレイで大きい瞳を、力ない諦めの色にしている彼女の表情はうますぎて怖い。
第3話でプールに飛び込み、瞬きもせずユラユラ揺れる彼女の表情は、生きるつもりがない感じが漂っていて、ゾワゾワした。