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立ちふさがる司法の現実

『アンチヒーロー』第6話より ©TBS
アンチヒーロー第6話より ©TBS

本作を通じて明墨は、自らの目的を実現するためには手段を選ばず、町工場の社長・羽木朝雄(山本浩司)殺害事件では、検察の証拠捏造を鋭く指摘し、緋山の無罪に繋げ、富田による傷害事件では、逆に父親の衆議院議員・富田誠司(山崎銀之丞)の証言買収を、検察に明らかにするように仕向け、敗訴を受け入れつつ、権力者に鉄槌を下すことに成功した。

明墨の敵は常に巨悪だ。逆に、依頼人や社会的弱者に対しては、とことん寄り添う弁護士でもある。第2話で証言台に立ち、難聴であることを明かされ、緋山の無罪判決に一役買った尾形仁史(一ノ瀬ワタル)に対し、別れ際、怒り狂う尾形をたしなめながらも、尾形の難病には同情し、それまで彼をクビにしてきた会社を訴え、概算で1000万円にも上る賠償金を取るために裁判に訴えることを勧め、その弁護を買って出る言葉を残す。しかも「無償」でだ。こんなところに明墨正樹の人間臭さを伺うことができる。

この巨大すぎる悪に対抗すると誓った明墨だが、どういう手法で闘いを挑んでいくのか。さらに明墨と緋山との会話でよく出てくる「江越」とはいったい何者なのか…。いよいよクライマックスに向かって、物語は予測不能の展開を見せている。

(文・寺島武志)

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