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奥深さのあるストーリー

門脇麦【ドラマ『厨房のありす』公式インスタグラムより】
門脇麦ドラマ厨房のありす公式インスタグラムより

誰かと共に生きるために必要なのは、譲り合いの精神だ。「ありすのお勝手」の常連客・雅美(伊藤麻実子)と夫の敬(伊藤公園)が、「洗濯は私がやるから、洗い物はあなたがやってね」とルールを決めているように。「洗濯物も洗い物もやりたくないから、全部あなたがやって!」なんて言っていたら、どちらか一方がストレスが溜まってしまう。したくない我慢をしなければならないのが、誰かと共に生きることの弊害でもある。

それでも、やっぱり美味しいご飯はひとりで食べるよりも、みんなで食べた方が美味しい。他人と暮らすというのはしんどいこともあるが、それよりも尊いものがあるのかもしれない。『厨房のありす』は、支え合い、寄り添うことの素晴らしさを教えてくれる作品だ。

ただ、温かいだけではないのが、このドラマの奥深さ。まず、倖生は素性さえ明らかになっていない。相関図に、「実は、ある目的で店にやって来ていて…!?」と書いてあったように、“何か”を秘めているのは間違いないだろう。また、心護がゲイであると明かされた時から疑問には思っていたが、やはりありすは心護の実子ではないようだ。しかも、ありすを産んだ母が創薬化学者の蒔子(木村多江)であることを、心護はかたくなに隠そうとしている。

蒔子は、どうしてありすと一緒に暮らしていないのか。そして、なぜ心護に実の娘を託したのか。ハートフル・ミステリーの“ミステリー”の部分にも、注目していきたいと思う。

(文・菜本かな)

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