西島秀俊と芦田愛菜の演技合戦が凄い…引き込まれる理由とは? ドラマ『さよならマエストロ』第3話考察&感想レビュー
TBS系にて放送中の西島秀俊主演ドラマ、日曜劇場『さよならマエストロ~父と私のアパッシオナート~』。西島演じる天才指揮者・夏目が、芦田愛菜が演じる娘や家族との絆と、自身の人生を取り戻す再生物語。今回は、第3話のあらすじとレビューをお届けする。(文・あまのさき)【あらすじ キャスト 解説 考察 評価 レビュー】
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【著者プロフィール:あまのさき】
アパレル、広告代理店、エンタメ雑誌の編集などを経験。ドラマや邦画、旅行、スポーツが好き。
父と娘、団員同士の”不協和音”
「さよならマエストロ~父と私のアパッシオナート~」第3話では、対立が浮き彫りになった。
まずはトランペット奏者の大輝(宮沢氷魚様)と、晴見フィルに加入したばかりの天才チェロ奏者・羽野(佐藤緋美)。もともとバンド活動から音楽に関わるようになったという大輝は、繊細なクラシックの演奏とは相性が悪い。それを羽野は「ピッチが悪い」とみんなの前で痛烈に批判した。その後も他の演奏者の欠点を上げ連ね、晴見フィルの魅力でもあるほんわかした空気をぶち壊す。
羽野と同じタイミングで加入したフルート奏者の瑠李(新木優子)は、そんな対立をどこか楽しそうに見ている節があった。夏目(西島秀俊)を捕まえ「不協和音が起きてるわね」とささやくところからも、その様子が伺える。対する夏目の返答もなかなかだった。「それもまた、面白い音です」。彼は、どんなことでも楽しめる。
視聴者的には難局と思える場面だが、夏目にとってはそんなふうにすら映っていないのだろう。
練習後、瑠李は羽野を捕まえて、「猛者と切磋琢磨したいなら、プロオケに行きなさいよ」と声をかける。至極真っ当な意見だ。晴見フィルがお遊びということではないが、彼らは生活のためではなく、日々の暮らしの彩りとして音楽をやっている。瑠李がそれでもここにいるのは「何かが起こりそうな気がするから」だという。
これは完全に視聴者と同じ感覚だろう。夏目という、才能あるちょっと変わった指揮者のもとで起こる化学反応をこそ、わたしたちは楽しみにしている。愛する音楽を完璧に奏でたい羽野とて、この想いは同じはずだ。
一方、「下手くそでごめんね!」という捨て台詞を残して練習を途中退席した大輝は、祖父・二朗(西田敏行)の営むうたカフェで酒を煽っていた。「俺のピッチが悪いんじゃない、あいつの耳が良すぎるんだ!」と悪態を吐きながらも、二朗に呼ばれればお客さんの歌に合わせてトランペットを奏でる。ピッチや譜面に捉われず、のびのびと演奏する大輝は心底楽しそうだった。
その様子を見た夏目も、「素晴らしかった!」と絶賛する。当たり前だが、音楽家にもいろいろなタイプがいることを再確認する。
このとき、晴見フィルは小規模ながらコンサートをうつことを計画していた。会場はいつもの練習場所で、すでにチラシを作って各所に貼ったり、家族や知人に声をかけたりしていた。ところが、この動きに気付いた市長の白石(淵上泰史)が、部下に命じて会場の施設点検を入れるように仕向ける。そしてあろうことか、それを響(芦田愛菜)に伝えさせたのだ。
どんな嫌がらせだと食って掛かる団員たちに対し、市の決定だと強固な姿勢を貫く響。父親である夏目は、それをただ見つめるだけだった。