「昨日の記憶が、私たちを明日に繋げる」
「毎日少しずつ積み上げてきた全ての記憶が、未来の自分をつくっている。信頼も、愛情も、自信も。昨日の記憶が、私たちを明日に繋げる。今日が終わって明日が来ることは、当たり前だと思って生きてきた。昨日の記憶を失うまでは。私はまだ、医者なのだろうか」
第1話の冒頭で流れるミヤビのモノローグが印象的だった。自分が、誰と、どこへ行き、何をして、どう感じたか。脳はさまざまな記憶を保管し、私たちのアイデンティティを形成している。
そんな人間にとって、最も重要と言える臓器を扱う脳神経外科が本作の舞台。命と直結する過酷な現場であり、中でも一分一秒を争うのが脳卒中の治療だ。脳卒中は脳梗塞、脳出血、クモ膜下出血の3つの病気の総称で、脳の血管がつまることによって起こる脳梗塞が全体の7割を占める。
時間が経てば経つほど脳細胞が壊死していき、一命を取り留めても何らかの後遺症を残す人が多い。今回の患者である赤嶺レナも言葉を発することができず、後遺症による失語症と診断される。
レナは女優で、長い下積み経験を経てようやく主演ドラマが決まったばかりだった。すぐにリハビリを開始するも、マネージャーであり夫の博嗣からドラマの降板が伝えられる。脳外科医でありながら、医療行為を行えないミヤビと、女優でありながら、言葉を失ってしまったレナ。二人の人生がオーバーラップする構成が見事だ。