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家族ゲーム 演出の魅力

ワケありな中流家族と風変わりな家庭教師の交流を描くファミリーコメディー。第57回(1983年)キネマ旬報ベスト・テンで第1位に選ばれた、80年代を代表する日本映画の1本である。

かつて映画監督になるためにはプロの現場で助監督経験を積む必要があった。しかし80年代に入ると潮目が変わり、自主映画出身の作り手が台頭。現在では大半の映画監督が自主映画からキャリアをスタートさせている。監督の森田芳光は、石井岳龍や大森一樹などと並ぶ、自主映画出身の映画作家の第一世代に属する存在だ。

本作では、横一列に並ぶ家族を正面から映した演劇的な食卓シーン、よく聞き取れないボソボソとしたセリフ回し、ぎこちない編集のリズムなど、既存の映画文法を逸脱した、掟破りの演出が出色だ。机に突っ伏す動きを真下から捉えるアクリル板を活用したトリックカット、肩がぶつかるほどの距離で行われる対話シーンなど、すべてのカットが不自然さに満ちている。

積み重なった違和感が頂点に達するのが、クライマックスの食卓シーンである。家庭教師の吉本(松田優作)が奔放な振る舞いで食卓をメチャクチャにするこのシーンでは、家族たちがギリギリまで吉本のアクションに関心を示さないなど、リアルとはかけ離れた荒唐無稽な光景が繰り広げられる。本作は生真面目さをウリにした「家族ドラマ」ではなく、あくまで「家族ゲーム」なのであり、観客は箱庭を覗くように、妙ちきりんなキャラクターたちの行動を乾いた笑いとともに観察する態度が求められるのだ。

一方、風刺的であるとはいえ、父性の失墜や子供をつぶす「受験戦争」の弊害など、家族と教育にまつわる社会問題への鋭い問いかけを含んだ作品でもある。他人事だと思って笑って観ていると、突然喉元にナイフを突き付けてくる。そんな一筋縄ではいかない映画なのだ。

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