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家族ゲーム 音楽の魅力

本作では音楽が一切使用されておらず、長男・慎一がレコードを聴く場面であっても、音楽はヘッドフォンをかけた登場人物にしか聞こえない。

サウンドトラックが使われていない分、際立つのは様々な効果音である。食事シーンでは、目玉焼きの黄身やコーヒーをすする音、食べ物の咀嚼音、食器がぶつかる音など、不快な音響がこれ見よがしに強調され、観る者の心をざわつかせる。

また、暴力シーンにおいても音響がユニークな効果を発揮している。言うことを聞かない茂之に対し、吉本が突発的に平手打ちを見舞うカットでは、表情を一切変えずにアクションに移る松田優作の芝居もさることながら、何よりも「バチン」という乾いた打撃音が痛さを雄弁に物語っている。

他方、効果音の強調は暴力表現をギャグに昇華する機能も果たしている。クライマックスにおける吉本が孝助の腹を殴る場面では、テレビの格闘ゲームを思わせる大袈裟な効果音が付けられており、痛さよりも滑稽さにアクセントが置かれるのだ。

昼寝にふける茂之、慎一、千賀子の3人を映し出すエピローグでは、終始ヘリコプターの飛行音が大音量で鳴っている。エンドクレジットが流れ出すとヘリコプターの飛行音はそのまま、劇中で交わされたセリフの応酬がプレイバックされ、ミステリアスな印象を与える。本作は音楽が使われていない反面、独創的な音響表現に聴きどころがあるのだ。

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