告白 演出の魅力
青少年のいじめ、引きこもり、殺人をテーマにしたショッキングな内容ながらも、スマッシュヒットを飛ばし、2010年の国内興行収入ランキングではトップテン入りを果たした。また、評論家からも高く評価され、キネマ旬報ベストテンでは堂々の2位にランクイン。興行的に成功し、批評的にも高い評価を得た背景には、毒々しい物語を幻想的なタッチで描いた、監督・中島哲也の演出手腕が大きく寄与している。
少年・直樹が母親を刺殺するシーンでは、包丁を振りまわす動きと血が噴き出るタイミングがまったく合っておらず、非現実的で滑稽な印象を与える。
色彩の演出もユニークである。純白の牛乳に赤い血液が注入されるカットや、飛び散った血しぶきで部屋の白壁が赤く染まる映像は、ショッキングな効果を発揮。愛美が溺死するシーンでは、プールの水が緑色に染まっており、不気味な雰囲気を醸し出している。
同監督の十八番であるスローモーション演出も見所の一つだ。無垢と残酷が入り混じった少年少女の一挙手一投足が鮮明に捉えられ、すこぶる美しい効果を上げている。一方で、観る者を挑発するような、悪趣味スレスレの演出は好みが分かれるところ。
また、引きこもりの少年が心を病んでいく過程には現実感がまるでなく、アニメ的な描写も頻出するため、実写映画ならではのリアリティに富んだ演出を好む人にとっては、興ざめする場面も多いかもしれない。