告白 脚本の魅力
原作は人気ミステリー作家・湊かなえの同名小説。前半部分で事件の犯人を早々に明かし、後半はクラスの様子と犯人である少年2人の心の変化を描きつつ、森口の復讐を丹念に描いている。
冒頭の30分間は森口が教壇に立ち、生徒たちに事件のあらましを説明する場面が続くが、回想シーンを巧みに入れ込んだ構成によって、決して飽きさせない。「娘を殺した生徒に復讐するために、HIVに感染した婚約者の血液を牛乳に混ぜて飲ませる」といった過激なアイデアも話題になった。しかし、実際のところ、陽性者の血液入りの牛乳を飲んだだけでは、HIVに感染する確率は極めて低いとされており、病気に対する誤った認識が世界観のベースになっている。
後半では上記の告白が嘘であったことが明らかにされる。しかし、本作では森口の嘘にまんまと騙され、精神を崩壊させていくキャラクターが描かれており、「ちゃんと調べればそんなに慌てる必要はないでしょ」というツッコミを禁じ得ない。本作の物語はあくまでリアルとはかけ離れた「残酷なおとぎばなし」であり、アクチュアリティを求めていはいけないのだ。