「あのセリフは台本には書かれていなかった」
現場で生まれたシーン
――――後半の「プリンのシーン」がとても面白かったです。撮影時の現場の雰囲気はどのようなものでしたか?
「田坂役の水石さんは台本に書いてないこともずっとアドリブで喋っていて。水石さんを見ていると、“私も自由にやっていいんだ”という気持ちになりました。水石さんのアドリブに感化されて、あんな感じになったのかもしれません」
――――他のシーンでも水石さんはアドリブで演技することが多かったですか?
「色々なアイディアを試されていました。終始何か言っているけど、何を言っているのか分からないこともありました(笑)。私はツッコミ役ではないけれども、合いの手を入れたくなるようなことをずっとやってらっしゃるので、『次は何を言うんだろうな』と、その場その場で生まれるものに反応していくのが楽しかったです」
――――中井さん自身も脚本に書いてある通りの台詞を言うのではなく、現場で生まれたものに対して素直に反応していたのですね。宮内がプリンを食べ、『ちょっと待って…美味い!』という一連のお芝居の間がとてもユーモラスでした。
「ありがとうございます。あのセリフは台本には書かれていなかったんですよ。何回かテストをやらせてもらった時に、『ちょっと待って…』という言葉が自然と出たのを監督が見逃さず、『それいいね』と」
――――自然と生まれた中で出来上がったシーンだったんですね!
「そうですね」
――――スピンオフドラマで一度水石さんと共演されていますが、今回映画の現場で共演してみて、改めてどんな方だと思いましたか?
「個人的なお話はあまりしていないので、パーソナルな部分についてお答えするのは難しいのですが、前回ご一緒した時も、台本に書かれているセリフを忠実に言うのではなく、その場で反応し合い、自由にやらせてもらいました。阪元監督は、それを全部上手に拾ってくださいました。スピンオフドラマで田坂さんと宮内の距離感や関係性を掴ませてもらったので、映画に入りやすかったです」
――――水石さんは田坂さんのキャラクターに近いところがあるのでしょうか?(笑)
「いや、あのままだとちょっと嫌じゃないですか(笑)。普段は普通に落ち着いた大人の方ですが、田坂さんになると鬱陶しいキャラクターになるので凄いなと思っていました」
――――ではちゃんと切り替えをなさっていたんですね(笑)。水石さん失礼いたしました。今回現場で1番意識していたことはなんでしたか?
「前作を拝見した時にアクションももちろんですが、会話が大好きだったんです。『ベイビーわるきゅーれ』シリーズは、ある意味、ちさととまひろの会話劇でもあると思っていて。現場では会話のテンポ感を崩さず作品の世界に上手く入り込むことを意識していた気がします」
―――中井さんは会話劇がお好きなんですか?
「好きですね。何気ない人の会話って面白いじゃないですか」
―――実は以前、中井さんが出演していらした舞台『夜だけがともだち』(作・演出:ふくだももこ)を観劇したことがあるのですが、あの舞台も会話劇でしたね。
「ご覧になったんですか!? 嬉しいです。そうですね、確かにあの作品も会話劇でしたね」