「コンテクストを理解して正確なイメージを提示する」
“覚悟を必要とした”制作プロセスについて語る
―――撮影が進む中で、三宅監督と堀畑さん、関口さんとの関係性は変化していきましたか?
「構成の話に繋がりますが、時間的には逆転しているんですよね。映画の前半は撮影時期としては遅く、後半の服作りのパートは早い時期に撮影しています。
また、前半は服づくりではなく、彼らの言葉や世界観をこちらが再解釈して描くパートであるため、いわゆるダイレクトシネマとも違う。最初は距離があったけど、徐々に親密になり打ち解けていくという展開を描く作品ではありません」
―――撮影を通じて作り手と被写体が濃密な関係を築いていく、その過程を記録する作品ではないということですね。
「生活に密着して徐々に親密になっていき、知られざる心情を吐露するといった人間ドラマではないのです。
『距離を縮めていった』というよりかは、撮影を通じて『理解を深めていった』という言い方が適切かもしれません。コンテクストに対する理解を深める。それは彼らの言葉と向き合うことを意味します。
彼らが綴る文字や、声に出して語る言葉を再解釈するわけですが、それは容易なことではありません。例えば、『綺麗な夜空を撮って当てはめれば合うのではないか』といった表層的な作業ではないのです。
概念を練り上げるようにして、緻密に物づくりに励んでいる彼らの言葉に対し、あまりにもトンチンカンな、表面的なイメージを当てはめることはできません。コンテクストを理解した上で、正確なイメージを提示する必要があります。
一方で、この映画は彼らのプロモーションではないので、自分なりの解釈もしっかりと示さなければいけません。それは一見簡単そうに見えるかもしれませんが、大変覚悟の要る、骨が折れる作業でした」
―――堀畑さんと関口さんは、完成した作品をご覧になって、どのような感想を語られましたか?
「先ほども述べましたが、彼らはブランドのコンセプトを誰よりも考え抜き、緻密な言葉で発信している人たちなので、それがどのように解釈され、映像化されているのかについて厳しい目を向けるのは当然です。
実際、完成までに何度も試写を行って、様々な意見をもらいました。とはいえ、繰り返しになりますが、決して彼らのプロモーションではないので、いただいた意見や提案は気づきのポイントとして一度立ち戻りはしますが、彼らから提案に対して、賛同できるものは受け入れるけれど、逆にそこであえて彼らの提案とは異なるものを持ってくることもありました。
気づきポイントとして一度立ち止まるんだけど、違う答えを出す。そういうプロセスでしたね。完成した作品をご覧になったお2人は、最終的にとても喜んでくれました」