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「日常で目にするものに美と時間の深みを感じてほしい」
映像と音響に込められた三宅監督の思い

©GROUP GENDAI FILMS CO LTD

―――堀畑さんは映画後半で「一番身近に批判者がいることで、物作りの強度が上がる」といった言葉を口にしますが、matohu の服づくりに通じるやり取りが、三宅監督とお2人の間でなされていたのですね。先ほど、matohu の表現に日本文化の本質的な深さを感じたと仰いましたが、そのようなテーマは以前から三宅監督の中にあったものでしょうか?

「元々、西洋の文学や哲学に強い関心があったのですが、ある時から、日本人が日本語を使って世界をどのように解釈していくかに興味が芽生えました。

言葉自体に認識の方向付けがなされているわけなので、日本人として世界を見る時に見えるものは、他の言語を使う人々とは異なるはずです。とはいえ、それは純粋な日本というものではなく、様々な要素によって相対化されたものであって…難しいですね。

一つ言えるのは『時間が積み重なって出来た確かなものが、現在のリアリティの中にちゃんと生きている』ことに関心があるんだと思います。それは古層にあるものを発見するきっかけにもなります」

―――“時間が積み重なって出来た確かなもの”というお言葉からは映画が連想されます。

「時間のレイヤーを表現する時に、“時間の積み重なり”それ自体は見えるものではありません。

カメラは基本的には目に見えるものしか映せません。とはいえ、何らかの手段を用いることで、目に見えないものを感じさせることができるのが映像表現だと思うんですよ。

例えば、目には見えない“手触り感”といったものでも、音との組み合わせや、映像の構成、カメラワークを工夫することによって観る人に想起させることはできます」

―――なるほど。今仰ったことは、三宅監督の映画づくりの原理のようなものでしょうか?

「原理であり思考です。嗜好でもありますね」

―――最後の質問です。これから本作をご覧になる方にどのような言葉をかけますか?

「“日本の美”というテーマもそうですし、“言葉の映画”と聞くと、小難しく、取っ付きにくいイメージを持たれるかもしれません。

しかし、語られる言葉は決して難解ではなく、非常に平易ですし、言葉と映像の絡み合いを通じて、日常で目にするものに美しさや、時間の深みを感じてもらえる作品になっていると思います。

本作を観て映画館を出た時の風景は、それまで見ていたものと違って見える。そんな体験が出来ると思うので、ぜひ映画館で観てほしいですね」

写真武馬怜子

3月25日(土)シアター・イメージフォーラムほか全国順次公開

【作品情報】

■作品タイトル
『うつろいの時をまとう』
監督:三宅流
撮影:加藤孝信
整音・音響効果:高木創
音楽:渋谷牧人
プロデューサー:藤田功一
出演:堀畑裕之(matohu)、関口真希子(matohu)、赤木明登、津村禮次郎、大高翔ほか

【2022年/日本/96分/ カラー/DCP/5.1ch/バリアフリー上映対応】

協力:一般社団法人日本ファッション・ウィーク推進機構、PEACH
助成:日本芸術文化振興会
製作・配給:グループ現代
©GROUP GENDAI FILMS CO., LTD.
公式サイト

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