CURE 音楽の魅力
ゲイリー芦屋によるサウンドトラックはさほど強くは印象に残らないが、静謐な不協和音によって、映像の力をしっかりと引き立てている。
エンドロールには19世紀の音楽家・ハインリッヒ・リヒナー作曲のピアノソナタを使用。美しいピアノの調べには雑踏のノイズが重ね合わされ、日常に潜む狂気を巧みに表現している。
さらに、音響表現も凝りに凝っている。間宮が拘置所を脱獄するシーンを例にとろう。間宮は壁や柱に椅子を思いっきり打ち付け、建物を震動させることで、看守を洗脳する。間宮によって引き起こされる地響きのような震動は映画館の椅子を揺らし、自宅で鑑賞する者の身体をも揺らすだろう。
「悪意の伝染」を描く本作において、音響表現は欠かすことのできないファクターなのだ。
主な使用楽曲
ハインリッヒ・リヒナー『ジプシーの踊り』