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カンヌでの評価は? 映画『怪物』、現地メディアによる最速レビューを紹介。是枝裕和監督、待望の最新作の内容と出来栄えは?

text by 編集部

是枝監督の最新作『怪物』は、カンヌ国際映画祭の最高賞「パルムドール」を競うコンペティション部門に選ばれ、2年連続7回目の出品となっている。会場で上映トップバッターを切り、拍手喝采とスタンディングオベーションを受けた。気になる本作のレビュー内容を、現地メディアを参考にご紹介する。

現地メディアの反応はいかに…。映画の内容も紹介!

映画怪物カンヌ国際映画祭の様子

是枝裕和監督は自身の17作目となる長編映画『怪物』をカンヌ国際映画祭に出品。『万引き家族』以来の日本語作品となる本作では、人気脚本家・坂元裕二とコラボ。今回は、カナダの映画ニュースサイトScreen Rantによる、映画『怪物』のレビューを紹介する。

本作を構成するポイントは、人間の思春期、嘘などの欺瞞行為、そして人道的観点から見たその行為の結果。この3つの視点を通し、人生の複雑な問題を徐々に明るみに出していく。この映画は、観客に多大な忍耐を要求する作品ではあるが、それに対する見返りは十分にある。

主人公の少年・湊(黒川想矢)は、学校生活で直面する様々な問題が原因で、奇妙な行動を起こすようになり、湊の母・早織(安藤サクラ)は、湊の行動に何か原因があると考え、湊の学校へたびたび出向き、その答えを追求する。

同級生の依里(柊木陽太)と担任の保利(永山瑛太)は、どうやら問題の別の側面を知っているようだ。ストーリーは3人の視点に沿ってゆっくりと展開していく。徐々に出てくる嘘、それに伴った結果が明らかとなる。そして終いには、登場人物すべての悩みに関わる、とある“埋もれた真実”が明らかになる。

「幼少期」「秘密」「社会に馴染みたいという人間の欲求」。神々しいとも言えるこの映画のモチーフはこの3つだ。本作は「いじめ」「欺瞞」「自分の気持ちに正直になること」について柔らかく語っていく。これらのテーマを扱う本作は、特に年齢を重ねるにつれて顕著になる人生の複雑さについて、大変優れた表現を行っている。

坂元裕二の脚本は、人を“怪物”と捉えることが何を意味するのかを、青春時代に私たちが経験したであろう複雑な感情を丁寧に描きつつ、繊細に考察する。坂元は主人公の湊を通し、観る者に子供ならではの経験や感情を味わわせ、そしてそれが大人達とのコミュニケーションにどのような影響を与えるかに焦点を当てている。

本作のストーリーには、メンタルヘルスや児童虐待に関連するテーマが登場する。そしてそのテーマは観客の不意を突く形で登場することが多く、フェードアウトや突然のシーンの中断などを経て、登場人物の視点の錯綜も相まって、観客に衝撃を与える。繊細でありながら優しく柔らかいアプローチで、作品の重要なポイントを強調することに成功している。

さらに、カメラマンの近藤龍人とのコンビによる素晴らしい風景や映像が、好奇心と感動に満ちた体験を視聴者にもたらす。是枝監督は映画の最後の20分程まで、結論が一体どこにあるのか教えてはくれない。時に、登場人物のセリフは延々と続き、理解するのに多大な忍耐を必要とするため、それが楽しみの妨げになることもある。しかしそのような要素が存在するからこそ、観客に容易に話の全貌を理解させず、物語に没入させることができる。

3人の異なるキャラクターの目を通し、複雑な人生経験を見事に探求した映画『怪物』は、いじめ、児童虐待、嘘に関連する多様なテーマに取り組んでいる。

是枝監督の卓越した映像センスと、坂元の優しい脚本は、完璧なコンビネーションを見せている。力強いこのコンビは、出演キャストの感情を余すところなく表現する素晴らしい作品をものにした。

早くも視聴が待ち遠しい映画『怪物』は、5月17日に開催された2023年カンヌ国際映画祭でプレミア上映され、日本では6月2日に初公開される予定となっている。

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