ウルトラミラクルラブストーリー 映像の魅力
撮影監督を務めたのは、1976年生まれの近藤龍人。『ばかのハコ船』や『リアリズムの宿』をはじめとした山下敦弘監督作品で注目を集め、2019年には是枝裕和監督『万引き家族』のカメラを担当し、日本アカデミー賞最優秀撮影賞を獲得。名手ひしめく国内の撮影監督の中でも、名実ともに指折りの存在である。
主人公の陽人は一瞬たりともジッとすることなく、終始ハイテンションでフレームの中を動きまわる。その点、本作の手触りは、恋愛映画よりもアクション映画に近い。陽人の奇想天外な動きを安定感のある移動撮影で的確にフォローしていくカメラワークは絶品という他ない。
陽人と子供たちがキャベツ畑を駆けまわる様子をとらえたロングショットなど、本筋とは絡まない“遊びのカット”も多く、瑞々しい運動感で観る者の心を掴む。同じく、終盤に突然登場する馬の疾走も、物語にはまったく関係のない細部ではあるが、圧巻の迫力でインパクトを残す。
陽人と町子が木漏れ日の射しこむ森の中を散歩するシーンや、夕焼けの田園風景をゆったりとした足取りで歩くシーンなど、自然の表情が驚くほど美しく撮られているのも、特筆すべきだろう。陽人が身を埋める土の感触や、麦の穂を揺らす風の匂いなど、観る者の五感を刺激するような映像は、本作をありきたりではない、破格のスケールを持った恋愛映画へと高めることに成功している。