ウルトラミラクルラブストーリー 音楽の魅力
エレクトリックギターの轟音ノイズ、マリンバやスティールパンといった独特の響きを持つ楽器を駆使したフリーキーな音楽が特徴的である。音楽を担当したのは、数多くのドラマや映画のサウンドトラックを手掛ける一方、即興演奏にも才腕をふるう大友良英。
陽人がキャベツ畑に首から下を埋め、顔面いっぱいに農薬を浴びるシーンで鳴り響くのは、ポルトガルギターの神妙な音色と、耳を快く刺激するシンセサイザーの高音である。特定の感情に働きかけることのない抽象的なサウンドは、陽人の身に訪れようとしている変化を表現しているようだ。
エンディングテーマには、シンガーソングライターの中村一義率いるバンド「100s」によるアップテンポのロックナンバー『そりゃそうだ』を使用。観る者を唖然とさせる荒唐無稽なクライマックスの直後に、疾走感のある楽曲が流れることで、ラストシーンから受けた衝撃はエンドロールが終わるまで弱まることなく持続するだろう。
ノイズを駆使したサウンドトラックの実験性もさることながら、津軽弁のセリフの応酬は一聴しただけでは意味不明の部分も多く、意志を伝える役割を超えて音の塊と化し、リズミカルな響きを獲得。初めのうちは耳慣れない津軽弁のセリフに困惑しても、見進めていくうちに意味を読み取ることを忘れ、小気味の良いリズムに耳を奪われるだろう。
《使用されている楽曲》
100s 『そりゃそうだ』